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熱をためた後で電気に変換する「風力熱発電」、日本でも実証か

「シーメンスの発表以降、風向きが変わった」
熱をためた後で電気に変換する「風力熱発電」、日本でも実証か

シーメンスの資料より(写真はイメージ)

 風力を利用して熱をため、後で電気に変換する「風力熱発電」の実証試験が日本でも始まりそうだ。エネルギー総合工学研究所(IAE)が複数の大手企業と実証研究を検討しており、2017年度内にも試験プラントの建設を決める可能性が高まっている。電気を蓄電池にためる場合に比べて、20分の1以下と安く、真新しい技術や材料も不要のため、新興国への輸出技術に化ける可能性も秘める。

 風力熱発電は風車内部に大型の磁石を用いた発熱器を搭載し、風車の回転エネルギーを利用する。発生した熱で「溶融塩」という媒体を循環させ、熱を地下タンクに蓄える。電力が必要なときに、熱で蒸気をつくり、蒸気タービンを回してエネルギーを取り出す。

 研究を主導するIAEの岡崎徹研究員は「熱機械は電池に比べて発電効率が低いとの指摘が多い。だが、蓄熱コストは電池の20分の1であり、設備コストなどトータルで考えれば、圧倒的に安い」と語る。

 コスト安からもわかるように、特徴的なのは蒸気タービンなど使う技術が成熟している点だ。岡崎氏は「完成されている技術ばかりなので場所を問わない。新興国で風力が拡大すれば必ず必要になる技術」と強調する。

 実際、蓄熱はこれまで、「古い技術」と再生エネルギーの議論では見向きもされなかったが、新興国での再生エネルギーの利用が普及し始める中、変化の萌芽(ほうが)も見える。

 2016年には独シーメンスが電力会社などと実証プラントの建設をすでに表明。完成すれば、世界初の「風力熱発電」の試験設備になる見込みだ。

 岡崎氏も「シーメンスの発表以降、風向きが変わった」と語るが、同時にそれは世界の市場での技術競争で、すでに日本が遅れをとっていることを物語る。岡崎氏は年明けにも、実証設備の建設の概要をまとめたい意向を示している。
日刊工業新聞2017年8月10日
江原央樹
江原央樹 Ehara Hiroki 日本能率協会コンサルティング
風力を熱エネルギーに変え、蓄える。風力=発電という認識が大勢で、この発想は今まであるようでなかったように思える。このアイデアを応用してコージェネシステムにも活かせるのではないか。温暖な気候の日本においては、高緯度のヨーロッパなどに比べると熱需要が少なく、熱がどうしても余ってしまうという声が良く聞かれる。ついては、余ったらとにかく蓄熱し、時期をずらし必要な時に蒸気やバイナリー発電により使い道が多様な電気としての利用を徹底できれば更に環境にやさしくエネルギーを効率的に活用できるのではないかと思った次第である。

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