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循環が富を生む、サーキュラーエコノミーで経済効果595兆円!? 

欧州で加速。日本でも続々とモデル生まれる
 欧州連合(EU)が限られた資源の活用に知恵を絞って産業を興すサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の実現を目指している。市場経済の原理を取り込んで環境と経済の双方にメリットを生み出すのが狙いだ。日本国内でも従来は再利用できなかった廃棄物を資源に変えるリサイクルにより、補助金に頼らずに利益を生みだす取り組みが増えている。次世代リサイクルが経済成長のけん引役となりそうだ。(松木喬)

無駄な消費減る


 EUは2015年末、サーキュラー・エコノミーの実現に向けたEU共通の枠組み確立を目的にした「サーキュラー・エコノミーパッケージ」を採択。域内の国は順次目標を設定する計画だ。EU全体としては一般廃棄物の65%をリサイクルし、埋め立て処分を10%まで縮小するといった目標がある。加えて、サーキュラー・エコノミーの推進で200万人の雇用と6000億ユーロ(約80兆円)の経済価値創出も掲げた。資源循環を環境政策にとどめず、経済成長と結びつける取り組みだ。

 EUが考えるサーキュラー・エコノミーは事業分野も広く、リサイクルに留まらない。コンサルティング会社でアイルランドに本拠を置くアクセンチュアが定義したモデルには製品の長寿命化も含む。

 製品が長く使われるほど、資源が長持ちして無駄な消費が減るからだ。そのために保守・修理業のニーズが高まる。故障発生を未然に防ぐM2M(機器間通信)、IoT(モノのインターネット)といった新しい情報通信技術(ICT)の需要が生まれる。
 


ICTの恩恵


 シェアリング(共同所有)もモデルの一つ。代表的なカーシェアリングは、駐車していることが多い自動車の使用頻度を高め、資源の有効活用になる。すでに配車サービスが新しい産業として台頭している。

 アクセンチュアの海老原城一マネジング・ディレクターは「技術進化でビジネスモデルができつつあり、サーキュラー・エコノミーが加速されるのは間違いない」と見通す。

 具体例が、ICTによって異業種や新興企業が参入可能となった保守・修理業や配車サービスだ。同じく高橋信吾シニア・マネジャーは「設計、調達、製造から無駄をなくし、サプライチェーンを高度化することが本質」と指摘し、「企業間連携によるものづくりの無駄排除も進む」という。同社はサーキュラー・エコノミーの実践で30年までに世界で4兆5000億ドル(約595兆円)の経済効果が生まれると分析する。

 資源のほとんどを輸入に頼る日本は資源リサイクルに力を注いできたが、欧州に比べて市場経済の視点ではなく環境政策としての位置付けが強い。リサイクル品も採算より環境への貢献度を優先して採用されている。IoTなど新技術を駆使して他社と連携し、経済成長を後押しする日本版サーキュラー・エコノミーを生み出すことが求められる。

<次ページ:日本各地の取り組み−地域と企業が連携>

2017年10月9日 日刊工業新聞
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
日刊工業新聞で4月から連載してきたサーキュラーエコノミーの最終回として掲載しました。紹介済みの話題もありますが、地域貢献などの切り口でまとめ直してみたつもりです。補助金や環境貢献だけでなく、経済原理でリサイクルを回すモデルが日本で生まれていると思います。わかりやすいのが、地域課題と結びついた例。欧州式のICT、IoTも加わると、新しいリサイクルモデルが日本でも加速されるのではないでしょうか。

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