【ディープテックを追え】専用半導体で狙うゲノム解析高速化
次世代シーケンサーの進化に伴い、普及が進むゲノム解析。一方、課題もある。ゲノムデータを演算処理する計算時間だ。次世代シーケンサーの読み取りが早くなっても、演算処理に時間がかかっていた。
ミタテゼプトテクニカ(MZT、東京都渋谷区)はこの課題解決を目指すスタートアップだ。日本の半導体会社からエンジニアが集まり、設立した。原島圭介社長は「ゲノム診断をレントゲン並みに身近にする」と力を込める。
コストは低下も、計算に課題
2000年にほぼ完了したヒトゲノム計画以降、ゲノム解析のコストは低下を続けてきた。2000年ごろは約100億円以上かかっていた解析コストは、現在約10万円程度まで低下してきた。ここに貢献したのが次世代シーケンサーの進化だ。多くのゲノムデータを処理できるようになり、コストが下がってきた。
課題もある。次世代シーケンサーではゲノムデータをぶつ切りにして処理をする1次解析と、それらをつなぎ合わせる2次解析を経る。この2次解析に時間がかかっている。MZTはゲノム解析向けのASIC(特定用途向け集積回路)を開発。膨大なゲノムデータを最適に処理するアルゴリズムと組み合わせ、解析時間を5分以内まで縮める。同社は解析速度の向上により、対応できる患者数が増えればゲノム解析のコストも低下するとにらむ。ASICを採用することで低消費電力も狙う。16個のチップを一つのアクセラレータとして使う。導入費用は米イルミナの製品よりも10分の1程度の200万円台での提供を目指す。
24年の販売を目指す
24年ごろの販売を目指す。同社は同時期に次世代シーケンサーが2万台程度普及すると予想する。次世代シーケンサーの1.5倍から3倍の解析機器が必要だと試算。同社はそこで1割程度のシェアの獲得し、200億円規模の売り上げを目指す。
原島社長は「米エヌビディアをロールモデルにしたい」と話す。GPU(画像処理半導体)が祖業のエヌビディアは、人工知能(AI)開発を支援するソフトウエアを手がけるなど、半導体販売の事業モデルを変化させてきた。MZTもゲノム解析用半導体の販売から事業を広げ、ゲノム応用ソフトウエア事業への展開も視野に入れる。
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