【ディープテックを追え】「検査不能は1%台」。ゲノム解析を不妊治療に応用するスタートアップの自信
遺伝子情報を医療に活用する取り組みが進んできた。次世代シーケンサーの進化に伴い、ゲノム解析のコストも低下傾向だ。海外ではこうしたデータを診療だけでなく、新薬の開発につなげる動きもある。
一方、解析を担うのは海外企業が中心なのが実情だ。そこに一石を投じようとしているのが、バリノス(東京都江東区)だ。同社は子宮内の細菌を解析し、不妊治療に役立てる。検査精度の高さを売りに海外需要の取り込みを狙う。
妊娠との関係性を調べる
従来、子宮内に細菌はいないと考えられていた。ただ、米国の研究によってその定説が覆され、米スタンフォード大学の研究では子宮内の環境が乱れると体外受精の成功率が低下することが発見された。「ラクトバチルス属」という乳酸菌が特に重要だと考えられており、妊娠率との相関性も指摘されている。
バリノスは子宮内に存在する細菌を解析し、種類や比率を調べる技術に強みを持つ。子宮内に存在する細菌は非常に少なく、検出が難しかった。また、腸内や空気中の細菌が検体に交じることで判定ができなくなってしまう。同社は検査結果が読み取りやすくするために、検体へ前処理を行ったり、遺伝情報を判断するソフトウエアを工夫して判定不能率を下げた。桜庭喜行最高経営責任者(CEO)は「判定不能率は1%台。この数字は簡単には出せない」と胸を張る。同社はこうした技術と米国の先行研究を組み合わせて、検査サービスを実現した。すでに国内の医療機関250施設以上で導入されており、累計の検査数は1万8000件を超える。
早期の海外展開へ
2022年8月には複数のベンチャーキャピタル(VC)から6億円の資金調達を実施した。早ければ22年内にも海外へ進出する。まずはアジアから事業開始を目指す。現地企業と提携し、検査サービスの需要掘り起こしを狙う。
子宮内の細菌と子宮頸がんとの関係性も研究されており、同社も注目している。将来はこれまでの検査技術を応用し、これらの疾患の兆候を発見するサービスを開発する。疾患の予防や早期発見につなげる。
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