欧米事業立て直しへ、MS&ADインシュアランスグループHD社長が燃やす執念
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)は2022―25年度の中期経営計画で、修正自己資本利益率(ROE)10%以上を目標に掲げる。元々は前中計(18―21年度)でグループ修正ROE10%に設定していたが、最終年度に9・5%と、あと一歩及ばずだった。利益の足かせとなった英国子会社MSアムリンの収益力を高め、安定的に2ケタ台の修正ROEを目指す。
「アムリンをしっかり回復させる」。原典之社長は、今中計での欧米事業の立て直しに執念を燃やす。アムリンは21年度に北米のハリケーンなどで保険金支払いがかさみ赤字を計上。過去にも大型災害で度々、業績が下ぶれ、足元はサイバー保険など災害の影響を受けにくい保険引き受けの拡大で収益改善を急ぐ。25年度にはグループ修正利益390億円の黒字を計画。達成できるかは10%以上の修正ROE目標の一つのカギとなる。
同業では損保首位の東京海上HDが21年度に修正ROE12・7%と、すでに10%超えを実現。東京海上が利益の5割近くを海外で稼ぐのに対し、MS&ADは利益に占める海外比率はまだ1割程度にとどまる。M&A(合併・買収)も推進して25年度には海外比率を3割程度に引き上げる計画だ。
8月には米国の再保険仲介のトランスバースを約540億円で買収すると発表。仲介手数料で稼ぐ独特なビジネスモデルで、25年度に修正ROEを0・2ポイント押し上げる効果を見込む。21年度にあと0・5ポイントで10%だったことを踏まえると、少しずつの積み上げが大事になる。
だがトランスバースは18年設立の若い会社で、21年度まで赤字決算。「今後の収益貢献は未知数」(大和証券の渡辺和樹氏)との声がある。16年に買収したアムリンがまだ赤字だけに、市場からはMS&ADの企業買収の手腕に疑問を呈する見方がある。早期にアムリンを黒字化し、市場の懸念を払しょくすることが欠かせない。