中古車オークション運営企業がROEの高水準維持を長年掲げている理由
DX投資で収益性向上
ユー・エス・エス(USS)は自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標として捉え、15%を上回ることを目指している。2020年度はのれんの減損損失を計上し純利益が前期比80・5%減となったことからROEも2・3%と一時的に下がったが、21年度は16・9%を達成。高水準を維持していくためには「まずは前年度より高い業績を目指すこと。加えて、成長投資とのバランスを考えた上で配当や自己株式取得などの株主還元に注力している」(山中雅文副社長)とする。
配当性向は現在55%以上を目標としており、21年度は年間配当66・2円で55%を達成。さらに株式上場以来、22期連続での増配を実現している。総還元性向を高めるため21年11月から22年5月までに509万株の自己株式を取得、6月には5625万株の消却を実施。最近は大きな金額を振り向ける成長投資案件がなく、現預金が増加していることから自社株買いを積極的に行ってきた。一方、今後の方針については「足元ではマーケットのボラティリティー(変動性)が高く、タイミングを見極めて検討したい」(山中副社長)。
6月に改定した役員報酬制度では、賞与や業績連動型株式報酬の評価基準の一つとしてROE15%を設定。近年は日本の投資家もROEを意識する傾向にあるが、同社はそれ以前から海外投資家が注目してきた経営指標であるROEの高水準維持を長年掲げている。「社内的にも浸透しており分かりやすい指標で役員のコミットメントを高める」(同)狙いだ。
資本政策を推し進める一方で、成長投資による事業拡大も課題だ。中古車オークション事業では、出品車両情報などを記載する出品票のデジタル化や車両の撮影のための最新システム導入などに着手しており、デジタル変革(DX)投資で収益性を向上する。また他社との提携やM&A(買収・合併)を通じた新事業の創出や事業ポートフォリオの見直しで収益基盤の強化を図る。