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小売り7社、今日から「指定公共機関」で何ができる?

コンビニ・スーパー、支援物資の輸送に。“ラストワンマイル”の課題残る
小売り7社、今日から「指定公共機関」で何ができる?

災害時に小売りが果たす役割は大きくなっている(熊本地震後に店舗の復旧に取り組むイオン大津店の従業員)

 イオンやセブン&アイ・ホールディングス(HD)など小売り7社は7月1日付で、災害対策基本法に基づく指定公共機関となる。これまでに政府が指定公共団体にした民間企業は道路や運輸、エネルギー系が主で、小売業を指定するのは初めてだ。災害時に食品や日用品を供給し避難生活も支える“インフラ”として、小売業の存在感は高まる。

 追加指定を受けたのはイオン、セブン&アイ・HD、イトーヨーカ堂、セブン―イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート、ユニーの7社。「東日本大震災や熊本地震後に、支援物資の配送や営業の早期再開で果たした役割が評価された」と関係者は語る。熊本地震では東日本大震災の経験が生き、被災地域が局地的だったこともあり、各社の代替生産や営業再開は比較的スムーズだった。

 一方で大きな課題となったのが物流だ。支援物資を運ぶトラックなどの扱いは基本的に一般車両と同じだった。このため交通規制対象となった道路の通行は制限され、それ以外の道路では渋滞に巻き込まれた。災害発生後に優先通行の手続きをする方法はあるが時間が掛かるため、迅速な輸送に支障を来した。

 指定公共機関となったことで、事前に緊急通行車両に登録しておける。省庁や都道府県などが情報共有する、中央防災無線網も活用できる。イオンの津末浩治グループ総務部長は「自衛隊などと同じ情報を持つことで、スピード感を持って対応できる」と語る。

 一方で商品や支援物資を被災者に届ける“ラストワンマイル”に関しては課題が残っている。災害が起こると、店舗の従業員も被災者となる。熊本地震では東京などから社員が支援に向かい、早期の復旧につなげた。

 コンビニエンスストアの多くは直営店ではなく、営業に関しては加盟店オーナーらの判断に委ねられる部分が大きい。混乱している状況で、商品を必要な人に、できるだけ公平に届けるための判断をするのは難しい。

日刊工業新聞2017年6月30日
江上佑美子
江上佑美子 Egami Yumiko 科学技術部 記者
支援物資に関しても、熊本地震では自治体や避難所に差配する人が足りず、届けたおにぎりやパンなどが無駄になってしまうことがあった。小売り企業が直接的に関与しづらい部分ではあるが、イオンは店舗などで実施している防災訓練で、近隣の自治会と連携するなどして、解決に役立てようとしている。

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