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セブン―イレブン、防災のキーマンが語る緊急時の最新ノウハウ(前編)

初動の的確な対応へ「まず地図上の各種情報を直感的に理解できるようにした」
 今やコンビニは防災の最前線。中でもセブン―イレブンは早くからシステム作りを始めた先進企業だ。3月に仙台市で開催された防災産業シンポジウムで、粟飯原勝胤(あいはら・かつたね)セブン&アイ・ホールディングス執行役員システム企画部シニアオフィサーが語った具体的な取り組みを2回に渡って紹介する。

<粟飯原氏>
 セブン―イレブンは2月末で1万7491店舗出店している。近くで便利なお店として、24時間365日、日常生活に欠かせない商品やサービスを提供し続け、暮らしを支えるライフラインとして身近で頼れる存在でありたいと考えている。

 社会インフラの一翼を担うコンビニエンスストアはいろいろとあるが、地域社会から災害発生時には、営業を継続することが一番大きな評価と期待をされていると思う。いつもと同じように安心して買い物ができることを目指している。
 
 そうした中でセブン―イレブンの災害対策システムの始まりと、直近の「7VIEW(ビジュアル・インフォメーション・エマージェンシー・ウェブ)」構築の背景、官民連携社会貢献の展望、といったお話をしたい。

 災害対策システムはまず2005年に店舗の停電を検知するシステムを作った。各店舗のコンピューターには停電発生時に電源を供給する無停電電源装置(UPS)があり2時間ほど電気を供給できるが、停電が発生すると5分後にコールセンターに通知する仕組みを作った。5分以内の停電・復旧は結構あり、5分以上停電が継続すると長時間に及ぶことが多いからだ。こうした情報を社内で共有し、台風発生時の冷凍・冷蔵設備の対応や、夜間停電時の防犯対策などに活用している。
 3・11の時、ちょうど私は東京の本部にいたが、即座にこのシステムでリストが上がってきた。一方としては2500店規模で停電が発生しているという情報だった。14分後の15時現在では東北だけでなく全国で合わせて1896店舗で停電が生じていた。そこへのサポートを即座に始めた。
 
 東北へはすぐにヘリコプターをチャーターし菓子パンや支援物資などいろいろなものを用意したほか、発電機、仮設トイレも確保した。移動販売車を延べ20店舗営業し、セブン銀行については発電機と無線通信を備えたATMを積んだトラックをつくり現地を支援した。

 また昨年は、2月には山梨県などでの記録的な大雪、8月には各地の土石流やがけ崩れ、9月には御嶽山の噴火など災害が続き、より詳細な地域情報の見える化の必要性を強く感じた。災害を防ぐことは残念ながらできないが、私どもとしては起きた瞬間からどう動けるか、その時間をいかに短くできるか、そのためにはどのように情報を入手したらよいか、を考えている。

 初動の的確な対応がきわめて重要なので、正しい情報をより早く入手してわかりやすく共有できないか、それにはまず地図上に各種情報を組み合わせて直感的に理解できるようにしようと考えた。災害時はとてもあわてていて緊張もしている。簡単に伝え、使えることが大きなポイントだ。

 そこで7VIEWを構築中だ。地図に落とし込んだ例えば停電情報から、加盟店に対し非常用電池があるうちに発注データをセンターサーバに送ってもらったり、店舗周辺も停電して交通信号が停止すれば渋滞が生じると考えて物流対策を組んだり、といった使い方をしている。
(後編は明日公開予定)
日刊工業新聞2015年04月16日 「モノづくり日本会議」特集ページ
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
防災のカギを握るビッグデータ。民間でデータを一番使いこなしているのはコンビニであり、そのトップにあるセブンだろう。いざという時にいかにそのデータを公開していけるかが減災につながる。その意味で内閣府などが音頭をとって、官民が一体となって防災産業をまとめていく流れに期待したい。

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