もはやAV機器メーカーではない!?JVCケンウッド、無線ソリューションの本気
ハードウエアの売り切りからサービスに軸足。カギは業務用向けでの成長
JVCケンウッドが業務用無線事業を本格化する。2014年に米EFジョンソン・テクノロジーズ(EFJ)を買収して以降、課題だった収益構造を転換し、事業拡大の基盤は整いつつある。低迷していた同事業を成長軌道に乗せることができれば、業績全体の浮上につながる。
15年、JVCはハードウエアの売り切り中心の事業から、サービスなどを組み合わせた「ソリューションビジネス」へ軸足を移した。その一手がEFJの買収だった。
JVCは企業や工場、店舗、鉄道などエンタープライズ向けが中心だったが、買収により、EFJが得意とする警察や消防といったパブリックセーフティー(公共安全)市場に参入。合わせてEFJの持つ無線システムを取り込んだ。
相神一裕副社長は「ようやく端末メーカーから、無線システムメーカーへ大きく舵(かじ)を切ることができた」と手応えを見せる。
ただEFJとのシナジー創出は、想定よりも遅れた。「市場環境は悪くないが、期待以上にEFJが伸びなかった」(相神副社長)。当初は、北米に強いJVCの販路を活用しようと考えていたが、北米のデジタル無線規格「P25」に対応した公共安全向け無線機は専門の知識やシステムとの連携が必須。JVCはノウハウが不足していたため、立ち上がりに時間がかかった。
結局、EFJの販路に再び切り替えると同時に、16年10月には無線端末のブランドを「ケンウッド」に統一し、イメージを刷新した。
しかし、まだ収益力は低迷しており、17年3月期は業務用無線を抱えるパブリックサービス部門が、全事業部門の中で唯一、減収、営業減益となった。
ただ、足元では成果が出てきた。従来、ほぼゼロだった米国内の主要空港向けで受注を獲得。自治体向けなど他の大口受注も獲得しつつある。
相神副社長は「受注残は伸びており、確実に右肩上がりになる」と自信を示す。エンタープライズ市場では、米国向け製品の派生品を展開することも視野に入れる。18年3月期は無線事業で増益を見込む計画だ。
今後は事業体制の強化にも着手する。入札案件の提案部隊を増やし、20年には現在の1・4倍まで人員を拡充する方針。
さらに現在5%程度の保守サービス事業の売上比率を引き上げ、利益率の向上を図る。売り上げ拡大に合わせてサポート人員を拡充し、将来は同事業の比率を15%まで引き上げる考えだ。「18年頃から好循環に乗せたい」(相神副社長)と力を込める。
次世代ビジネスの仕込みも始まった。3月には高速通信規格のLTE技術を抱える米ソニム・テクノロジーズと資本業務提携を結んだ。
スマホのノウハウを端末に組み込むことで、データ伝送サービスのような課金制ビジネスにつなげられる可能性がある。まずは18年3月期の増益を達成できるかが、事業成長の試金石となりそうだ。
(政年佐貴恵)
15年、JVCはハードウエアの売り切り中心の事業から、サービスなどを組み合わせた「ソリューションビジネス」へ軸足を移した。その一手がEFJの買収だった。
JVCは企業や工場、店舗、鉄道などエンタープライズ向けが中心だったが、買収により、EFJが得意とする警察や消防といったパブリックセーフティー(公共安全)市場に参入。合わせてEFJの持つ無線システムを取り込んだ。
相神一裕副社長は「ようやく端末メーカーから、無線システムメーカーへ大きく舵(かじ)を切ることができた」と手応えを見せる。
ただEFJとのシナジー創出は、想定よりも遅れた。「市場環境は悪くないが、期待以上にEFJが伸びなかった」(相神副社長)。当初は、北米に強いJVCの販路を活用しようと考えていたが、北米のデジタル無線規格「P25」に対応した公共安全向け無線機は専門の知識やシステムとの連携が必須。JVCはノウハウが不足していたため、立ち上がりに時間がかかった。
結局、EFJの販路に再び切り替えると同時に、16年10月には無線端末のブランドを「ケンウッド」に統一し、イメージを刷新した。
しかし、まだ収益力は低迷しており、17年3月期は業務用無線を抱えるパブリックサービス部門が、全事業部門の中で唯一、減収、営業減益となった。
ただ、足元では成果が出てきた。従来、ほぼゼロだった米国内の主要空港向けで受注を獲得。自治体向けなど他の大口受注も獲得しつつある。
相神副社長は「受注残は伸びており、確実に右肩上がりになる」と自信を示す。エンタープライズ市場では、米国向け製品の派生品を展開することも視野に入れる。18年3月期は無線事業で増益を見込む計画だ。
今後は事業体制の強化にも着手する。入札案件の提案部隊を増やし、20年には現在の1・4倍まで人員を拡充する方針。
さらに現在5%程度の保守サービス事業の売上比率を引き上げ、利益率の向上を図る。売り上げ拡大に合わせてサポート人員を拡充し、将来は同事業の比率を15%まで引き上げる考えだ。「18年頃から好循環に乗せたい」(相神副社長)と力を込める。
次世代ビジネスの仕込みも始まった。3月には高速通信規格のLTE技術を抱える米ソニム・テクノロジーズと資本業務提携を結んだ。
スマホのノウハウを端末に組み込むことで、データ伝送サービスのような課金制ビジネスにつなげられる可能性がある。まずは18年3月期の増益を達成できるかが、事業成長の試金石となりそうだ。
(政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年6月16日