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期待のネットワークカメラ。差別化のキーワードは「ニッチ」と「高付加価値」

年率10%以上の成長市場にパナソニック、ソニー、キヤノンなどが競い合う
期待のネットワークカメラ。差別化のキーワードは「ニッチ」と「高付加価値」

パナソニックは特定市場と合わせて規模も追う

 ネットワークカメラ各社の動きが活発化している。国内シェア首位のパナソニックはニッチ市場と規模を追う両輪の戦略で、グローバルシェア首位を狙う。ソニーは高付加価値品に注力して利益を重視。JVCケンウッドはソフトウエア部分を強化し、差別化に乗り出した。スウェーデンの最大手、アクシスを買収したキヤノンも加え、各社の差別化戦略が加速している。
 
 パナソニックが狙うのは、北米など先進国のニッチ市場向け。こうした分野で利益をあげる戦略だ。すでに米国の警察向けの車内監視カメラでは、3割のシェアを獲得。2月には米国の教育市場に強いビデオインサイトを買収した。フルハイビジョン(FHD)の4倍の解像度を持つ4Kなどの高性能品で、市場の取り込みを急ぐ。

 合わせて価格競争がメーンの中国では規模を追いシェア拡大を図る。「中国との競争に勝てれば、グローバルでも勝てる」。(パナソニックシステムネットワークスの繁澤努業界ソリューション事業推進部長)。中級以上のボリュームゾーンを獲得し、グローバルシェア首位を狙う。

 一方、ソニーは低価格帯は残しつつも、高価格帯製品に注力して規模よりも利益を重視する方針。「圧倒的な強みを持つイメージセンサーを軸に、高画質や高感度といった品質面で差別化を図る」(田中裕司事業部長)。ターゲットは撮影の難しい屋外や交通機関、空港といった特定業種向けが中心だ。

 また最近はハードウエア単品ではなく、周辺機器や画像解析技術などを組み合わせたソリューションに競争軸が移り始めている。
 
 JVCケンウッドは日本IBMと協業し、不審者を特定したり映像から特定の人物を探し出したりする「インテリジェントセキュリティシステム」を発売。早川勉プロフェッショナルシステムセグメントCPMは「製品の売り切りでは成長に限界がある。サービスビジネスを展開する基盤にしたい」と意気込む。

 パナソニックやソニーも、グループ内の他事業やシステムインテグレーターとの連携を強化するなど、ソリューションに力点を置き始めている。年率10%以上で成長するとされるネットワークカメラ市場で、競争が一層激化しそうだ。
(文=政年佐貴恵)
(2015年08月19日 電機・電子部品・情報・通信1)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
キヤノンのアクシス買収以降、ネットワークカメラ業界の動きが活発になってきた。市場は今後5年間、年率10%以上で成長するとも見込まれており、各社の期待も高い。一方でライバルは同じ国内メーカーはもちろんだが、一番の脅威は中国メーカー。低価格な上に最近では品質も向上してきた。日本メーカーには価格競争に陥り中国・韓国メーカーにシェアを奪われたテレビなどの家電の教訓を生かした戦略で、ネットワークカメラを「勝てる事業」に育ててほしい。

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