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高級ヘッドホン・イヤホン人気がハイレゾ普及を加速

JVCケンウッドは木の振動板を使ったヘッドホンを初投入
高級ヘッドホン・イヤホン人気がハイレゾ普及を加速

JVCケンウッドの新製品をPRする歌手の家入レオさん

 JVCケンウッドは、CDよりも解像度の高いハイレゾ音源に対応したヘッドホン「WOOD(ウッド)」2機種を、12月上旬に発売すると発表した。同社のヘッドホンとして初めて、木製の振動板を採用した。振動板の厚みを、従来比40%減の50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)に薄型化。高精細で臨場感の高い音源を再生できる。ハイレゾになじみのある愛好家を中心に訴求する。

 また内部形状の改良や、金属や木などさまざまな素材の部品を組み合わせるなどして音質を高めた。市場想定価格はより高音質な「WOOD01」が7万円前後、標準モデルの「同02」が5万円前後(ともに消費税抜き)。

 プロモーションを務める歌手の家入レオさんが会見に登場し「ほかのヘッドホンが使えなくなるくらい、臨場感がある」と商品をアピールした。

 単価が1万円以上する高級ヘッドホン・イヤホンは縮小するオーディオ市場の中でも順調に成長している分野だ。JVCケンウッドは製品ラインアップの拡充で同市場を攻略することに加え、同社グループで提供する楽曲配信などのビジネスにつなげて好循環を生みだすことを狙う

自社コンテンツとの組み合わせでハイレゾ訴求


 JVCケンウッドとソニーが、自社コンテンツとの連携強化で、CDよりも高音質なハイレゾリューション(ハイレゾ)市場に攻勢をかけている。共通するのはアーティストや録音スタジオを抱え、楽曲制作から再生機器まで一貫して手がける点。予想以上の勢いで立ち上がっている同市場で、両社は「音作りのノウハウを持つ」という独自の差別化ポイントと強みで先手を打つ。

 「音、きれいじゃない?」。JVCケンウッドは3月、子会社のビクターエンタテインメントが主催するロックフェスで、初の試みとなるハイレゾ視聴体験を実施した。音楽好きの若年層にハイレゾを周知し、浸透させることを狙う。

 聞き比べコーナーなどで列ができる中、注目を集めていたのが初のハイレゾ対応カーナビゲーションシステム「彩速ナビ タイプZ」を搭載した自動車だ。

 ナビの開発段階からビクター側の音響エンジニアらと協力。レコーディングスタジオで試作品をテストするなど、徹底的に音にこだわった。JVCケンウッド・カーエレクトロニクスセグメントの渋谷英治シニアスペシャリストは「家庭用オーディオでは協力していたが、まさかナビでもやるとは」と笑う。コンテンツ側との連携範囲は着実に広がっている。

 3月の発売後、ナビと車用スピーカーをセットで買う人も出てきた。車内は「個人がスピーカーで音楽を再生する最後のとりでになるかもしれない」(渋谷シニアスペシャリスト)。ハイレゾ対応機の拡充を視野に入れ、事業拡大を図る。

 ソニーも小型のハイレゾ対応ウォークマンやヘッドホンが好調に推移する中、新たな市場に可能性を見いだしている。同社のビデオ&サウンド事業本部V&S事業開発部の竹村昌樹統括部長は、ハイレゾ市場について「当初の想定よりも1年程度前倒しで立ち上がっている印象」とする。

アーティストからハイレゾで収録したいという声


 最近ではグループのレコード会社に所属するーティストから「ハイレゾで収録したい」という声が上がることも多く、魅力は着実に定着してきた。今後は「培ってきた録音技術や音楽配信プロセスを、どう製品開発につなげるか。コンテンツとハードの連携がより重要になる」と見る。

 ハイレゾ市場はまだ立ち上がったばかりで、海外展開もこれから。コンテンツとハードの両輪をどれだけうまく回せるかが、市場成長にも大きく影響しそうだ。



日刊工業新聞2015年11月11日電機・電子面に2015年4月13日の記事を加筆
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
JVCケンウッドの新製品のヘッドホンを視聴しましたが、まず驚いたのは音響空間の広がり。本当に臨場感が高く、目を閉じるとホールのような広い空間に一人で聴いているように錯覚するほど。「歩きながら聴いてたら事故るな」と感じました。高級ヘッドホン・イヤホンは低迷していた音楽再生機器市場で快進撃を続けています。これがハイレゾへの導入となり、「音楽が売れない」と言われる現状に風穴を開けるのか。楽曲配信サービスの広がりとともに注目しています。

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