ドライブレコーダーの平均単価が2割も上昇しているワケ
国内市場が活況、想定上回る。海外メーカー参入で競争激化も
ドライブレコーダーの国内市場が活況だ。業務用から一般ドライバーへとユーザーのすそ野が広がっているほか、メーカー各社が運転支援機能付きなど高機能品を投入し、製品単価が上昇。ドライバーに安全運転を促す車載機器として存在感を高めている。ただ、海外メーカーなど参入企業が増え競争が激化する見通しで、今後は差別化に向けた独自戦略が求められそうだ。
ドライブレコーダーは走行中に前方の様子を動画で撮影する機能を持ち、主にカメラと撮影画像を処理・保存する本体で構成する。ドラレコは車の走行状況を常時記録できるため、万が一交通事故が発生した際の原因分析に役立つ。
走行中の映像が常時録画されるため、日常から自然と安全運転を意識するようになり、結果的に事故防止につながるメリットがある。
調査会社のGfKジャパン(東京都中野区)によると、15年のドラレコ国内販売台数は前年比4割増の61万台と伸長した。平均単価も同2割増の1万3700円に上昇。
これまでトラックやタクシーなど業務用車両への搭載が主流だったが、近年は安全運転に対する意識の高まりから、一般のドライバーがカー用品店やネット通販で購入し、自車に装着するケースが増加。これに合わせてドラレコの品ぞろえも進み、市場活況につながっている。
需要拡大に伴い、JVCケンウッドは16年度中に生産能力を現状比3割増の月3万台規模に引き上げる。17年度には15年度比約6倍の60万台の販売を計画する。辻孝夫社長兼最高経営責任者(CEO)は「想定を上回る伸びだ」とドラレコ販売の好調さにうれしい悲鳴を上げる。
(ADAS機能を搭載したJVCケンウッドのドライブレコーダー)
メーカー各社は需要を取り込むため、製品の高機能化も進めている。競争軸の一つが高画質撮影機能だ。パイオニアはフルハイビジョンで撮影できるドラレコを今年投入した。
CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサーと広角レンズを採用。急な明るさの変化による白つぶれや黒つぶれを補正し、夜間走行時やトンネルの出入り口などでも高画質な撮影を可能にするとともに、車の前方の様子を広い視野角で撮影できるようにした。同社はドラレコメーカーとして後発だが「年間4万台の販売計画を半年で達成しそうだ」と手応えをつかむ。
撮影機能の高度化に加え、ドラレコに先進運転支援システム(ADAS)を付加した製品が登場し、新たな競争軸になりつつある。JVCケンウッドはADAS機能付きのドラレコを発売した。
自車と前方の車との距離を検知し、安全な距離が保たれていない場合に警告する「前方衝突警告」機能や、時速60キロメートル以上で走行中に車線からはみ出た場合に警告する「車線逸脱警告」機能など三つのADAS機能を搭載した。
ADASはトヨタ自動車や日産自動車、富士重工業など完成車メーカー各社が新型車を中心に相次いで搭載を進めており、燃費などと並びドライバーが車を購入する際のポイントの一つになりつつある。
ドラレコを購入することでドライバーが使用している車に手軽にADAS機能を付加できる点を訴求。製品の拡販につなげるのが狙いだ。
ドラレコの需要が伸びているのは未搭載車が多いためで、当面は市場拡大が期待できそうだ。ただ、海外メーカーなどの参入企業も増えており、価格や性能面で競争が激化することが考えられる。いかに他社と差別化できるかが需要を着実に取り込むための重要な要素になる。
こうした中、ドラレコを使った新たなサービスを提供するメーカーが出てきている。富士通テンは通信機能付きドラレコを使ってドライバーの安全運転を支援する法人向けのサービスを6月から始めた。
ドラレコを介して、急ブレーキや急ハンドル、車両のふらつきといった運転状況をクラウドに自動収集。個人の運転特性を解析し、安全運転の計画や教育をサポートするもので専門知識を持つ人材がいなくても簡単にドライバーの安全運転を管理できるのが特徴だ。
ドラレコそのものを高機能化するだけでなく、他社との差別化戦略の一環でドラレコを軸にした同様のサービスが今後増えていきそうだ。
(文=下氏香菜子)
ドライブレコーダーは走行中に前方の様子を動画で撮影する機能を持ち、主にカメラと撮影画像を処理・保存する本体で構成する。ドラレコは車の走行状況を常時記録できるため、万が一交通事故が発生した際の原因分析に役立つ。
走行中の映像が常時録画されるため、日常から自然と安全運転を意識するようになり、結果的に事故防止につながるメリットがある。
昨年の販売は前年比4割増
調査会社のGfKジャパン(東京都中野区)によると、15年のドラレコ国内販売台数は前年比4割増の61万台と伸長した。平均単価も同2割増の1万3700円に上昇。
これまでトラックやタクシーなど業務用車両への搭載が主流だったが、近年は安全運転に対する意識の高まりから、一般のドライバーがカー用品店やネット通販で購入し、自車に装着するケースが増加。これに合わせてドラレコの品ぞろえも進み、市場活況につながっている。
需要拡大に伴い、JVCケンウッドは16年度中に生産能力を現状比3割増の月3万台規模に引き上げる。17年度には15年度比約6倍の60万台の販売を計画する。辻孝夫社長兼最高経営責任者(CEO)は「想定を上回る伸びだ」とドラレコ販売の好調さにうれしい悲鳴を上げる。
(ADAS機能を搭載したJVCケンウッドのドライブレコーダー)
競走軸は高画質撮影とADAS
メーカー各社は需要を取り込むため、製品の高機能化も進めている。競争軸の一つが高画質撮影機能だ。パイオニアはフルハイビジョンで撮影できるドラレコを今年投入した。
CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサーと広角レンズを採用。急な明るさの変化による白つぶれや黒つぶれを補正し、夜間走行時やトンネルの出入り口などでも高画質な撮影を可能にするとともに、車の前方の様子を広い視野角で撮影できるようにした。同社はドラレコメーカーとして後発だが「年間4万台の販売計画を半年で達成しそうだ」と手応えをつかむ。
撮影機能の高度化に加え、ドラレコに先進運転支援システム(ADAS)を付加した製品が登場し、新たな競争軸になりつつある。JVCケンウッドはADAS機能付きのドラレコを発売した。
自車と前方の車との距離を検知し、安全な距離が保たれていない場合に警告する「前方衝突警告」機能や、時速60キロメートル以上で走行中に車線からはみ出た場合に警告する「車線逸脱警告」機能など三つのADAS機能を搭載した。
ADASはトヨタ自動車や日産自動車、富士重工業など完成車メーカー各社が新型車を中心に相次いで搭載を進めており、燃費などと並びドライバーが車を購入する際のポイントの一つになりつつある。
ドラレコを購入することでドライバーが使用している車に手軽にADAS機能を付加できる点を訴求。製品の拡販につなげるのが狙いだ。
未搭載車多く当面伸び続く
ドラレコの需要が伸びているのは未搭載車が多いためで、当面は市場拡大が期待できそうだ。ただ、海外メーカーなどの参入企業も増えており、価格や性能面で競争が激化することが考えられる。いかに他社と差別化できるかが需要を着実に取り込むための重要な要素になる。
こうした中、ドラレコを使った新たなサービスを提供するメーカーが出てきている。富士通テンは通信機能付きドラレコを使ってドライバーの安全運転を支援する法人向けのサービスを6月から始めた。
ドラレコを介して、急ブレーキや急ハンドル、車両のふらつきといった運転状況をクラウドに自動収集。個人の運転特性を解析し、安全運転の計画や教育をサポートするもので専門知識を持つ人材がいなくても簡単にドライバーの安全運転を管理できるのが特徴だ。
ドラレコそのものを高機能化するだけでなく、他社との差別化戦略の一環でドラレコを軸にした同様のサービスが今後増えていきそうだ。
(文=下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年8月17日