「ペッパー」「ロボホン」「パルロ」…3強から抜け出すのは?
人型コミュニケーションロボット、活躍の場広がる
富士ソフトの人型コミュニケーションロボット「パルロ」が、パシフィコ横浜(横浜市西区)などで開かれた第50回アジア開発銀行(ADB)年次総会会場でボランティアの案内役を務めた。2カ所のインフォメーションカウンターで会場内の案内や横浜の観光情報を発信。ボランティアスタッフとおそろいのスカーフ姿で来場者の目を引いた。
横浜市が募った約150人のボランティアとともに働いた。海外からの参加者に日本の先端技術をアピールするのが主な目的。会場では、パルロがカメラで人が近づいたことを確認し、会場案内や周辺情報を音声でアナウンスしていた。先端技術のお出迎えに人だかりができていた。
富士ソフトはパルロのほかペーパーレスシステムを提供しボランティアの仕事の効率化に寄与した。
1万台以上が普及し「人と共存するロボット」の先駆者となったソフトバンクの人型コミュニケーションロボット「ペッパー」。法人向けの「ペッパー・フォー・ビス」の登場から1年以上たち、客寄せでなく実際の業務を行うケースも出てきた。ペッパーを扱うソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部本部長にペッパーの現状と今後の方向性を聞いた。
―法人向けの採用数とアプリケーションの数は。
「2015年11月に受け付けを始めて以来、2000社以上に5000台が採用された。受け付けなどの『サービス』、販売業務サポートの『セールス』、販売促進の『PR』の三つが主な仕事。ペッパーの登場当時はいるだけで楽しさがあったが、いまはいるのが当たり前で見向きもされない。ちゃんと仕事をしないといけない」
「アプリは今後半年にかけて出すものを含めて約50種。これまでの経験で、小売店、飲食店など業界ごとに特化したアプリを出してパッケージ的に利用してもらった方が良いと分かった。結局はどんな仕事をさせるかが導入の議論になる。すぐ仕事ができることを支援することが重要だ」
―ロボットの仕事を新たに作るのと、既存のサービスにロボットを組み込むのとどちらが多いですか。
「小売りや飲食のチェーンは次の動きとして完全自動化を考えているところが多い。その構想にあるセルフレジとかのツールの一つにロボットがある、ということをよく聞く。ロボットは人と対話できて温かみがあり、電子看板などと違う。ロボットが持つ、顧客との結びつきを強める『エンゲージメント』の力を生かした利用方法が多く、それがロボットの仕事になる」
―シャープの「ロボホン」などライバルが出てきました。
「全般的には競合が出るのは良いこと。市場が存在しないことが一番良くない。皆で市場を盛り上げたい。その上で、対話ロボットの間ではエンゲージメントの高さを競うことになる。他のロボットとペッパーで、どちらが足を止めてもらうか、友人になってもらうかを比べてもらい、足りなかったらペッパーを改善すれば良い」
「ただ、我々はトータルで人がどういう体験をしてもらえるかを重要視する。ロボットの機器としての性能は極端な話どうでもいい。トータルのシステムでユーザーにどう心地よさや感動といった体験を与えるかが一番大事だ」
―ペッパー単体の進化もありますか。
「エンゲージメントを高めるために必要な要素を研究開発し続ける。例えば、いまの握手に満足していない。より良い体験となる握手ができるようにしたい。ソフトの更新で可能ならすぐやるしハードの改善が必要なら提供する」
「ハードの進化のテーマはいくつか議論している。法人向けに24時間動かし続けても壊れにくいというのも一つ。大きさが違うものも議論している。スマートフォンが使えない子供やシニア層との対話には小さい方が良いか、といった具合で検討している。スマホと一緒で3年の契約終了時に新たなペッパーを提案できれば面白い。研究開発向けに提供する『ナオ』は今の路線を続ける」
【記者の目】
法人向けのペッパーのレンタル料金は1台当たり最低でも月額5万5000円かかる。労働力として考えると決して安くない。ソフトバンクは20年にどの店にもロボットがいる世界を描いている。一層の普及には、役立つアプリ群の拡充と、対話能力の向上による“お得感”の演出が不可欠になるだろう。
(聞き手=石橋弘彰)
ボクシーズ(東京都千代田区、鳥居暁社長)は、シャープのロボット型携帯電話「ロボホン」がレストランのウエーターになるシステムを開発した。テーブルに敷くビーコン(無線標識)とスマートフォンが連動しスマホで料理の注文ができる同社のシステムとロボホンを組み合わせた。ロボットがオススメ商品の紹介などをすることで温かみのある接客を維持する。
ボクシーズが開発したオーダーシステム「プットメニュー」のインターフェースとしてロボホンを活用する。
プットメニューは接客の品質向上や店員の負担低減に役立つ。飲食店内のテーブルごとに敷いたシート状のビーコンで、どのテーブルから料理の注文や決済のリクエストがあったのか分かる。
利用客はアプリケーションを入れた自分のスマホから料理を選んで、シートの上にスマートフォンを置くと店側に注文を伝えられる。来店前から料理を選んでおけるほか、多言語対応しており日本語が分からない観光客の対応にも向いている。
ロボホンを各テーブルに置けば、音声対話で分かりやすくシステムの利用法を説明したり来客とのコミュニケーションを密にしたりできる。アンケート機能で利用者の好みを分析することで、個人に応じたオーダーをスマホ画面に映し出して提案する、といったことも可能となる。
プットメニューの利用料はビーコン5枚や発券機、専用タブレットなどの基本構成が半年で17万円(消費税別)。ロボホンはオプションとなる。
日刊工業新聞2017年4月19日
横浜市が募った約150人のボランティアとともに働いた。海外からの参加者に日本の先端技術をアピールするのが主な目的。会場では、パルロがカメラで人が近づいたことを確認し、会場案内や周辺情報を音声でアナウンスしていた。先端技術のお出迎えに人だかりができていた。
富士ソフトはパルロのほかペーパーレスシステムを提供しボランティアの仕事の効率化に寄与した。
日刊工業新聞2017年5月12日
「競合が出るのはよいこと」(ソフトバンクロボティクス)
1万台以上が普及し「人と共存するロボット」の先駆者となったソフトバンクの人型コミュニケーションロボット「ペッパー」。法人向けの「ペッパー・フォー・ビス」の登場から1年以上たち、客寄せでなく実際の業務を行うケースも出てきた。ペッパーを扱うソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部本部長にペッパーの現状と今後の方向性を聞いた。
―法人向けの採用数とアプリケーションの数は。
「2015年11月に受け付けを始めて以来、2000社以上に5000台が採用された。受け付けなどの『サービス』、販売業務サポートの『セールス』、販売促進の『PR』の三つが主な仕事。ペッパーの登場当時はいるだけで楽しさがあったが、いまはいるのが当たり前で見向きもされない。ちゃんと仕事をしないといけない」
「アプリは今後半年にかけて出すものを含めて約50種。これまでの経験で、小売店、飲食店など業界ごとに特化したアプリを出してパッケージ的に利用してもらった方が良いと分かった。結局はどんな仕事をさせるかが導入の議論になる。すぐ仕事ができることを支援することが重要だ」
―ロボットの仕事を新たに作るのと、既存のサービスにロボットを組み込むのとどちらが多いですか。
「小売りや飲食のチェーンは次の動きとして完全自動化を考えているところが多い。その構想にあるセルフレジとかのツールの一つにロボットがある、ということをよく聞く。ロボットは人と対話できて温かみがあり、電子看板などと違う。ロボットが持つ、顧客との結びつきを強める『エンゲージメント』の力を生かした利用方法が多く、それがロボットの仕事になる」
―シャープの「ロボホン」などライバルが出てきました。
「全般的には競合が出るのは良いこと。市場が存在しないことが一番良くない。皆で市場を盛り上げたい。その上で、対話ロボットの間ではエンゲージメントの高さを競うことになる。他のロボットとペッパーで、どちらが足を止めてもらうか、友人になってもらうかを比べてもらい、足りなかったらペッパーを改善すれば良い」
「ただ、我々はトータルで人がどういう体験をしてもらえるかを重要視する。ロボットの機器としての性能は極端な話どうでもいい。トータルのシステムでユーザーにどう心地よさや感動といった体験を与えるかが一番大事だ」
―ペッパー単体の進化もありますか。
「エンゲージメントを高めるために必要な要素を研究開発し続ける。例えば、いまの握手に満足していない。より良い体験となる握手ができるようにしたい。ソフトの更新で可能ならすぐやるしハードの改善が必要なら提供する」
「ハードの進化のテーマはいくつか議論している。法人向けに24時間動かし続けても壊れにくいというのも一つ。大きさが違うものも議論している。スマートフォンが使えない子供やシニア層との対話には小さい方が良いか、といった具合で検討している。スマホと一緒で3年の契約終了時に新たなペッパーを提案できれば面白い。研究開発向けに提供する『ナオ』は今の路線を続ける」
【記者の目】
法人向けのペッパーのレンタル料金は1台当たり最低でも月額5万5000円かかる。労働力として考えると決して安くない。ソフトバンクは20年にどの店にもロボットがいる世界を描いている。一層の普及には、役立つアプリ群の拡充と、対話能力の向上による“お得感”の演出が不可欠になるだろう。
(聞き手=石橋弘彰)
日刊工業新聞2017年4月12日
「ロボホン」に料理注文
ボクシーズ(東京都千代田区、鳥居暁社長)は、シャープのロボット型携帯電話「ロボホン」がレストランのウエーターになるシステムを開発した。テーブルに敷くビーコン(無線標識)とスマートフォンが連動しスマホで料理の注文ができる同社のシステムとロボホンを組み合わせた。ロボットがオススメ商品の紹介などをすることで温かみのある接客を維持する。
ボクシーズが開発したオーダーシステム「プットメニュー」のインターフェースとしてロボホンを活用する。
プットメニューは接客の品質向上や店員の負担低減に役立つ。飲食店内のテーブルごとに敷いたシート状のビーコンで、どのテーブルから料理の注文や決済のリクエストがあったのか分かる。
利用客はアプリケーションを入れた自分のスマホから料理を選んで、シートの上にスマートフォンを置くと店側に注文を伝えられる。来店前から料理を選んでおけるほか、多言語対応しており日本語が分からない観光客の対応にも向いている。
ロボホンを各テーブルに置けば、音声対話で分かりやすくシステムの利用法を説明したり来客とのコミュニケーションを密にしたりできる。アンケート機能で利用者の好みを分析することで、個人に応じたオーダーをスマホ画面に映し出して提案する、といったことも可能となる。
プットメニューの利用料はビーコン5枚や発券機、専用タブレットなどの基本構成が半年で17万円(消費税別)。ロボホンはオプションとなる。
日刊工業新聞2017年4月19日