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ニッポンのトラックに仕上がった「クオン」のスピリッツ

開発者が語る、ボルボの最先端技術と日本のモノづくり精神
【UDトラックス テクノロジーシニアバイスプレジデント ダグラス・ナカノ氏】
 UDトラックスのエンジニアリングの結晶だ。スウェーデン・ボルボグループの最先端技術を融合させただけでなく、日本のモノづくりの精神を反映させた日本製のトラックに仕上げた。13年ぶりの全面改良となった新型車両は250万時間の開発時間と、600万キロメートルのテスト走行を実施。安全性や積載性、保守性といったすべての面において、最高の新型車をつくったと自負している。

 性能を進化させた機械式自動変速機(AMT)「エスコット・シックス」は、迅速なギアチェンジにより運転性能を高めた。滑らかな変速を実現し、乗用車のようなドライビング感覚を味わえる。変速時にもドライバーは手元の操作などが不要で、路上に目を配り続けられる。安全性だけでなく、運転ストレスの軽減も図れる。

 燃費基準は社内試験の結果、現行車比5―6%改善。2016年排出ガス規制に適合したことはもちろん、最新のコモンレール燃料噴射システム、エスコット・シックスの採用や、車両の空気抵抗を改善したことなどで可能にした。

 効率的な運用という観点からも改良に臨んだ。検査や修理がしやすいブレーキシステムや保守が不要なシールドハブベアリングなどのメンテナンスフリー部品を取り入れた。

 これらにより、整備時間を社内計算上では、現行車比約50%の短縮が可能とみている。シャシーには、薄くしながらも強度を保てるようにハイテン材を採用。新しいエアサスペンションを導入したことなどにより、積載量は最大200キログラム引き上げることができた。

 キャブ(運転席部分)や内装のデザインは、日本文化が大切にする“調和”が基本コンセプト。加えて、人間工学に基づき、視認性や操作性の向上を図った。またエスコット・シックスは日本の運転状況に合わせてソフトウエアを改良した。

 品質上の目標は、ボルボグループでも非常に高い設定だった。多くのプロジェクトを経験してきたが、新型クオンの開発には、今までにないほどプライドと誇りを持っている。日本の開発技術の高さとチームワーク、果敢に挑戦するファイティング・スピリットがあればこその成功だ。
(文=尾内淳憲)
日刊工業新聞2017年4月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
運転性能や燃費、安全性、生産性、稼働率というトラックの五つの基本性能が格段に上がった。ドライバーの運転傾向をシステムが解析して省燃費運転をアドバイスする「燃費コーチ」機能もある。省燃費リポートを毎月作成してユーザーに提出できるという。多様な強みをどう効果的にアピールするかが拡販のポイントになる。 (日刊工業新聞第一産業部・尾内淳憲)

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