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日の丸コンテナ新会社、運航船腹量150万TEUで世界に挑む

7月発足へ。コンテナ事業なき海運3社は組織再編迫られる
日の丸コンテナ新会社、運航船腹量150万TEUで世界に挑む

統合効果の最大化には拠点の位置もカギ(商船三井の米ロサンゼルスのコンテナターミナル)


コンテナ船の穴埋め、海外ネットワーク再構築


 コンテナ船事業を切り離す各社にとっての課題が、海外ネットワークの再構築だ。川崎汽船の村上英三社長は「コンテナ船事業は組織のベース」と話す。

 海運会社にとってコンテナ船事業は海外の現地法人のあり方などを含めて組織全体の基盤となっている。このため、3社は新会社設立と並行して、コンテナ船事業が抜けた穴を埋める作業を進める必要がある。

 日本郵船は自動車船のネットワークをベースに、タンカーなどのネットワークを合わせて再編する。内藤社長は「グループの郵船ロジスティクスも世界中に拠点がある」と、グループ全体のアセットを最大限に活用する。

 商船三井は「米国や欧州はコンテナ船と別系統のネットワークがあるが、東南アジアはコンテナ船のみの拠点があり、2―3カ所で新たな現地法人を立ち上げることになる」(池田社長)と話す。

 商船三井では16年4月に主要な地域の現地法人の幹部に、その地域全体を包括した「国代表」の役割を与え、事業部門を越えて取り組む姿勢を鮮明にした。コンテナ船事業が無くなった後、こうした機能がより重要となるだろう。

市況は回復基調


商船三井の2万TEUのコンテナ船

 コンテナ船の運賃市況は韓国・韓進海運の破たんもあり、16年4月を底値に回復基調にある。川崎汽船の村上社長は先行きについて「18年4月の事業開始は、市況もよくなったところでスタートできる。統合効果も出てくるし、心配していない」と話す。

 海運業界では16年10月に3社が統合を発表した後も再編が続いている。世界最大手のA・P・モラー・マースク(デンマーク)は独ハンブルク・スードの買収を発表。買収すればマースクの船腹量のシェアは約19%まで高まり、すでに強固な地盤をさらに固めることになる。

 5月末には独ハパックロイドが中東のユナイテッド・アラブ・シッピング・カンパニー(UASC)を買収する予定。4月時点のハパックロイド、UASCの合計シェアは、日系3社を僅差で上回る規模だ。

 日本郵船の内藤社長は今の段階で「150万TEUの規模があれば十分」とするが、マースクは着々と規模の拡大を進めている。中堅以下では経営状況が悪化している海運会社もあり、こうした企業の取り込みによる規模拡大は、統合会社が競争力を高める上で必要不可欠となる。

 また、コンテナ事業と同じように市況低迷にあえぐドライバルク船事業も各社の悩みの種。コンテナ船のように切り出して事業統合をするのか、次の動きが注目される。
日刊工業新聞2017年4月21日「深層断面」
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
日本の海運大手3社では、海外現地法人のトップをコンテナ船のトップが兼任するなど、コンテナ船事業が海外ネットワークの基盤となっています。今後、コンテナ船が抜けた穴をどう埋めて、組織を再編成するのかは課題です。組織だけでなく、売り上げも大きく下がりますので、コンテナ船に代わる柱をどのように育てていくか、これも課題となります。

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