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日産、17年目のゴーン離れ

社長・CEO退任。ゴーン氏は何を残しこれから何をするのか

系列サプライヤーの生きる道


 日系自動車メーカーの世界的な好調を背景に業績拡大が続く国内部品業界にも、このところの日産自動車の不振が影を落とし始めてきた。

 日産系最大の部品メーカーであるカルソニックカンセイの2006年度第1四半期(4―6月)は、各利益項目で前年同期を約60%下回る大幅減益。売上高の7割が日産向けの鬼怒川ゴム工業も、経常損益は赤字に転落。ともに日産の販売不振に、原材料高が追い打ちをかけた格好だ。

 販売減がもろに響いた日産車体は10月、06年9月中間の業績予想を売上高で10%超、経常利益と当期利益は40%超、それぞれ当初見込みからの下方修正した。

 06年上半期(1―6月)は、05年9月までに100万台の販売増を狙った経営計画「日産180」の反動や、新車投入の端境期にあたることから「販売減を予想していた」と社長のカルロス・ゴーンはいう。

 だが部品メーカーにとって、その落ち幅は予想以上だった。さらに、日産が国内販売の不振を補うために、他メーカーからOEM(相手先ブランド)調達する軽自動車に力を入れる動きも、その恩恵をほとんど受けない直系部品メーカーにはボディーブローとなっている。

 影響は直系以外にも広がる。トヨタ向けが主力の独立系部品メーカー社長も「うちも日産との取引があり、業績に少なからず影響が出ている。何とか頑張ってもらいたい」と打ち明ける。

 こうした状況は部品メーカーの“日産離れ”に拍車をかける可能性がある。実際に99年の「日産リバイバル・プラン(NRP)」以降、系列を離れた部品メーカーは、トヨタやホンダなどとの取引を拡大してきた。

 シート大手のタチエスは現在、売上高の4割強をホンダ向けが占める。また日産車の約6割にランプを提供する市光工業は、05年度のトヨタ向け売上高が日産向けを上回った。

 旧日産圏の部品メーカーの多くは、まだ日産依存度が高いものの、現在のような状況が続けば、「海外進出や新技術提案などで、他の自動車メーカーを優先する事態が起こりかねない」と野村証券企業調査部自動車グループアナリストの桾本将隆は警鐘を鳴らす。

 その背景には、日産が仏ルノーと進めてきた共同購買に対する部品メーカーの“戸惑い”もあるようだ。共同購買会社「ルノー・ニッサンパーチェシングオーガニゼーション(RNPO)」について、あるエンジン部品メーカー社長は「ルノー色が濃い」と指摘する。

 「RNPOがどう考えているのか、不安に思っている日本の部品メーカーは多い。日系メーカーのように、部品メーカーと成功を分かち合おうという気持ちがあるのだろうか」と続ける。

 「技術の日産」を標ぼうしてきた日産。環境技術などで部品単位の技術革新がますます重要になる中で、部品メーカーの日産離れが進めば、その土台は崩れることになる。NRPからまもなく7年。日産のサプライヤー戦略は岐路に立っていると言えるだろう。

<次ぎのページ、「日産」と「NISSAN」の折り合いに苦労>

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
2つの連載から、日産とルノーの軌跡を考えるきっかけになれば。 すぐに大きな権力移行はないだろうが、大きな節目であることは間違いない。ルノー、日産、三菱自の意思決定を1人で迅速に行うのは事実上不可能。ルノー・日産の2社アライアンスでさえ、度々ノッキングを起こしていた。日産とルノーの資本関係は変わることなく、三菱自がその中に入ったことで一体化がさらに進むだろう。ルノーのポストが保証されるなら、ゴーン氏はより自動車業界の大きな変革をとらえた動きをするのではないか。まだまだサプライズはありそう。

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