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日産、17年目のゴーン離れ

社長・CEO退任。ゴーン氏は何を残しこれから何をするのか

販売会社に大ナタ


 6月27日の日産自動車の株主総会。カルロス・ゴーン社長は「今年度の国内販売は80万台から(計画の)84万6000台の間になる」と発言し、2005年度の決算発表で示した見通しを、事実上2カ月で下方修正した。

 06年度上半期(4―9月)の国内販売は前年同期比16・9%減の34万9697台。年間80万台もおぼつかないペースだ。前年同月割れは、9月でちょうど12カ月連続になる。

 前中期経営計画「日産180」の一つとして、05年9月までの1年間に世界100万台増販を掲げた目標を達成し、その反動は予想されたが「(落ち込みは)想定を超えている」とCOOの志賀俊之はいう。

 だが、振り返れば日産の国内販売は、ゴーンがCEOに就任した01年度の71万4000台を底に、04年度までは着実に台数とシェアを広げてきた。日産180が終了し、“台数至上主義”から“利益重視主義”へと転換する中、05年度も微減にとどまっている。

 ゴーン自ら販売店を行脚し、問題点をあぶり出してきた国内販売は、実際にはじわじわと体力を付けてきている。半面、計画数値に対して度重なる下方修正を繰り返してきたのも事実だ。

 ここ数年、販売台数は伸ばしながらも、計画未達を理由に立て続けに国内営業担当役員が交代した。04年3月末に国内販売担当常務だった北洞幸雄(現ファルテック社長)と、マーケティング担当常務の富井史郎(現福岡日産社長)が、05年3月末には北洞の後を継いだ副社長の松村矩雄(同日産プリンス大阪販売社長)がそれぞれ日産を離れた。3人の人事は、台数のコミットメントを達成できない国内販売に対するゴーンのいら立ちを象徴した。

 「なぜ、損をすることをやるのですか? 利益に対するコミットメントをどう考えるのですか」。日産ネットワークホールディングス社長の佐藤明は今、各販売会社の首脳にこう訴えかけている。

 日産は05年4月、かねてゴーンが「ブルー(ステージ)とレッド(ステージ)の違いが分からない」と指摘してきた販売2チャンネルを、全車種の併売化で事実上統合した。そして今年7月、佐藤率いる連結52販社の資産統括会社、日産ネットワークを設立した。販売改革第2幕の幕開けだ。

 ある販社の社長は「日産180で売る力はついた」と言う。日産は全社を挙げて現中計の「日産バリューアップ」で掲げる「投下資本利益率(ROIC)20%以上」に挑む。

 日産180では、増販目標をクリアするために値引き販売を繰り返し、自らの首を絞めて経営が悪化した販社も少なくない。台数ノルマに憶病になった販社経営陣の意識を利益重視に転換するため、ゴーンは直営の全販社に07年3月期の黒字必達を通告。甘えを完全に断ち切り、赤字販社には社長交代も迫る。信賞必罰の人事を見てきただけに、販社側も日産の本気を嗅ぎ取っている。

 ただ、佐藤が「赤、青関係なくなった時点で手を打つべきだった」と言うように、国内自動車市場はガソリン高で一気に小型車シフトが進み、少子化で需要は冷え込む。今だ隣接するブルー、レッドの両店が競合するケースも見られる。今年度を捨て石にする覚悟で臨む販社の選別作業や出店形態の見直しに、遅れは許されない。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
2つの連載から、日産とルノーの軌跡を考えるきっかけになれば。 すぐに大きな権力移行はないだろうが、大きな節目であることは間違いない。ルノー、日産、三菱自の意思決定を1人で迅速に行うのは事実上不可能。ルノー・日産の2社アライアンスでさえ、度々ノッキングを起こしていた。日産とルノーの資本関係は変わることなく、三菱自がその中に入ったことで一体化がさらに進むだろう。ルノーのポストが保証されるなら、ゴーン氏はより自動車業界の大きな変革をとらえた動きをするのではないか。まだまだサプライズはありそう。

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