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日産、17年目のゴーン離れ

社長・CEO退任。ゴーン氏は何を残しこれから何をするのか

トヨタ躍進への焦り


 「ゼネラル・モーターズ(GM)はトヨタ自動車に対抗する緊急性を認識していない」。提携交渉が行き詰まりを見せる米GMと、フランスのルノー・日産自動車の両陣営。9月最終週にパリで、2カ月ぶりのトップ会談を控え、ルノー副社長のパトリック・ペラタは記者団に対してGMへの不満をあらわにした。ペラタは、日産時代からカルロス・ゴーンの腹心中の腹心。ペラタのコメントは、そのままゴーンのいら立ちを表している。

 GMの苦境に端を発した今回の提携交渉。GMの大株主、カーク・カーコリアン率いる投資会社の米トラシンダが動いたことがそもそもの始まりだった。

 だからこそ提携の最大の目的はGMの経営再建にほかならない。しかし7月14日に最初のトップ会談が開かれ実際に交渉がスタートすると、なぜかゴーンの乗り気な姿勢ばかりがクローズアップされる。

 本来なら助けを求めるはずのGM会長のリチャード・ワゴナーが慎重な姿勢に終始し、手をさしのべる役のゴーンは積極的な姿勢をとり続ける。
                 

 先月27日のパリでの2度目のトップ会談では何ら具体的な成果を示せなかったが、それでもゴーンは「良い方向に向かっている」と言い切った。
 
 まるで“親切の押し売り”。そう受け取られかねないほど、今回の提携への意気込みを見せるゴーンの狙いは何なのか。「大きなチャンスが到来した。

 そのタイミングは選べない。我々はつかむことを決めた」。ゴーンはGMとの提携交渉に乗り出した理由をこう説明する。しかしその「チャンス」をあえて今、つかみに行かなければならない理由は明らかにしていない。なぜ世界販売1500万台を超える巨大な3社連合を作り上げなければならないのか。

 実はトヨタの躍進に焦っているのは、ワゴナーよりもゴーンの方なのかも知れない。1999年の最高執行責任者(COO)就任以来、日産を経営破たんの淵から業界トップクラスの好業績企業に蘇らせた経営手腕は誰も疑い得ない。

 ただ、そんな右肩上がりの復活劇に陰りが見えてきているのも隠せない事実だ。「(下期に新車投入が集中する)2006年度は上期の成長は難しい」と、日米欧での販売低迷はある程度想定済みとはいえ、成長のスピードではトヨタに水をあけられ始めている。

 80年代前後に日産を率いた故石原俊は、永遠のライバル、トヨタ追撃に向けて急激な拡大路線へと打って出た。しかしその積極策の多くは失敗に帰し、結局は99年にルノーの軍門へ下る遠因となった。

 再びトヨタを“目の上のたんこぶ”と感じ始めた「NISSAN」。世界中のメディアに登場しGMとの提携の意義について饒舌(じょうぜつ)に語り続けるゴーンに対し、日本人幹部は「90日の間は本件についてはノーコメントにして頂きたい」(志賀俊之COO)と貝になるばかり。

 “ワンマンショー”と化した今回の提携劇は日産が世界的な業界再編をリードする道筋へとつながるのか。それともいつか来た道をたどることになるのだろうか。

<次ぎのページ、販売会社に大ナタ>

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
2つの連載から、日産とルノーの軌跡を考えるきっかけになれば。 すぐに大きな権力移行はないだろうが、大きな節目であることは間違いない。ルノー、日産、三菱自の意思決定を1人で迅速に行うのは事実上不可能。ルノー・日産の2社アライアンスでさえ、度々ノッキングを起こしていた。日産とルノーの資本関係は変わることなく、三菱自がその中に入ったことで一体化がさらに進むだろう。ルノーのポストが保証されるなら、ゴーン氏はより自動車業界の大きな変革をとらえた動きをするのではないか。まだまだサプライズはありそう。

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