2055年に売上高10兆円を夢見る大和ハウスの「過去」「現在」「未来」
なぜ強いのか?「真っ先に役職者のやる気を挙げたい」(樋口会長)
資産効率の改善が今後の成否を占う
■資産構成の変化(2010.03)
事業ごとのROAでは住宅ストック事業が直近で100%を超えるなど、突出して高くなっているが、増改築の請負や売買仲介といった事業は資本投下がもともと少なくて済むという特性がある。一方で事業施設に関しては一定の資産を抱える必要があるため、ROAが低くなるのは当然として、10年3月期には7.3%だったROAが15年3月期では4.6%まで低下している点は今後改善が必要だろう。ROAが高いといっても住宅ストック部門の営業利益は100億円程度で、全体の利益の5%程度に過ぎず、会社全体として規模を追いかけるのであれば、ボリュームの多い事業施設事業の拡大は必須なはずだ。資産効率の改善が今後のM&Aの成否を占うことになるだろう。
■資産構成の変化(2016.03)
■事業別ROA
さらなる課題もある。海外売上高比率はまだ10%に満たないのである。同社の海外展開は83年に中国・上海で外国人用宿泊施設を建設したところに始まっているなど歴史は長いが、それから30年以上経過してもなお、その状況なのである。特に中国・無錫で開始したプロジェクトでは89億円の評価損(売上原価で処理)を計上する憂き目にあっている。
第4次中期経営計画で、コア事業に関しては既存事業の拡充と海外展開が課題であると明かし、15年度に海外売上高1000億円が目標だとしていた。住宅・不動産事業はもともと内需性が強い。スピーディーに海外展開を進めるためには現地の強いパートナー企業と組むかもしくは地場企業の買収が欠かせないだろう。大和ハウス工業が今後どのようなM&Aを繰り出すか、注目したい。
ファシリテーター・田口雅典の見方
数年前、植物工場の設備に大和ハウスが取り組んでいると聞いて「なんで? 本気?」と思ったものです。でも、その後も矢継ぎ早に繰り出される新しい事業開始のリリースを目にするうちに合点がいくようになりました。この会社は、「住宅をはじめ建築物を一種のプラットフォームと考えているんだな」と。そして、あらゆるサービスをそのプラットフォーム上で展開、「次に伸びる事業のテストマーケティングをしている」んだなと。加えてもうちょっといえば、「いろんなことをすることで、ちょっとでも動きが止まると埋没しかねない存在感を、新しいネタで保ち続けようとしているんだな」と。CMを含めて「次は何やるんだ大和ハウス!」と世間の期待感をあおって、自らに高いハードルを課しているんだな、と。