2055年に売上高10兆円を夢見る大和ハウスの「過去」「現在」「未来」
なぜ強いのか?「真っ先に役職者のやる気を挙げたい」(樋口会長)
住宅税制に大きな問題
日本には5750万戸のストック(住宅数)があり、空き家の750万戸を除く5000万戸のうち、1050万戸が耐震強度不足といわれる。これらは耐震補強のリフォームをするか、解体して造り直すしかないが、法的な規制はない。そこで2009年から私が会長を務めている住宅生産団体連合会(住団連)では、こうした耐震補強を促す法整備の必要性を国に提言している。
住宅の税制にも大きな問題がある。住宅は消費財とされ、土地付きで購入すると消費税と土地の固定資産税の両方を取られてしまう。欧米では住宅は資産とされ、消費税がかからないか、かけられても軽減税率が適用される。住宅は一般的に資産といわれながら、購入時に消費税も取られるのは大きな矛盾だろう。
住団連はこれについても、消費税が10%に増税される15年以降はせめて欧米並みに軽減税率を適用してほしいと訴えている。過去も消費税がアップした年の翌年は、2度とも翌年の住宅販売が約20万戸も落ち込んだ。15年に10%に増税するのはとてもリスキーで、性急に上げるべきではない。
雇用や収入を減らし、アベノミクス(安倍政権の経済政策)の足を引っ張ると心配している。国の財政が苦しいのは分かるが、20万戸がなくなると過去の実態から雇用で80万人、国内総生産(GDP)で10兆円、税収で1兆2000億円円の大きなマイナスになる。住宅業界の団体だからではなく、こうした客観的なデータをもとに陳情しているつもりだ。
中古販売は一石二鳥
(スマートタウン『スマ・エコタウン晴美台』)
日本では住宅が消費財扱いされ、20年程度で壊して建て替えようとする政策が、中古住宅市場の成長も阻んできた。20年たつと価値がゼロになってしまい、中古市場で売れない家ばかり増える。このため中古住宅の流通は年間100万戸台しかなく、欧米に比べ約6分の1しかない。米国では住宅は資産としてしっかり評価され、80年たった家でもしっかりと手入れされていれば、値が上がることさえある。
日本の住宅も今や50年も100年ももつようになってきた。新築やリフォームの履歴を証明する仕組みや、街全体が森で囲まれるような付加価値も工夫して、資産として評価されるように変えるべきだ。耐震設計の優れた技術も官民一体で開発すれば、さらに値打ちを高められる。
そうすれば中古市場が成長し、取引が盛んになる。仮に新築が減っても、住宅メーカーはリフォームの仕事を増やせるし、住宅に必要な商品を開発して売ればよい。家をつくれば多くの資源を使うので、中古販売を伸ばせば資源の無駄遣いや産業廃棄物を減らせることにもなる。まさに一石二鳥のアイデアといえるだろう。
大和ハウスも団地全体で太陽光発電によりエネルギーを創り、消費エネルギーとの和がゼロになるスマートタウン「スマ・エコタウン晴美台」(堺市南区)を完成した。全65戸の分譲住宅団地で、第1期分譲を13年3月に始めた。
高い防犯機能を備え、住民が協力して団地内で緑を育てる仕組みもつくり、付加価値を生んでいる。二酸化炭素を減らして環境を守ることができる。さらに20年には、完全にエネルギーを自給できる団地を開発する研究にも着手した。住宅で電気を購入しなくてもいい時代は必ずやってくる、と信じている。
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