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2055年に売上高10兆円を夢見る大和ハウスの「過去」「現在」「未来」

なぜ強いのか?「真っ先に役職者のやる気を挙げたい」(樋口会長)
2055年に売上高10兆円を夢見る大和ハウスの「過去」「現在」「未来」

「できれば20年前倒しで達成したい」と樋口会長


M&Aで事業の多角化を進める


M&A Online 2016年07月26日



 一風変わったテレビCMで有名な大和ハウス工業。同社は1955年4月に奈良県で創業したことからこの社名を冠している。ヤマトではなく、ダイワと読むのは「大なる和を持って経営に当たりたい」との思いが込められている。大和ハウスの創業時の製品は「パイプハウス」であったが、今や売上高3兆円、経常利益2000億円に迫る巨大企業に成長した。街中を歩けば建設中のアパートや建物には“大和ハウス工業”が建設会社となっている表示を目にすることも多く、またホテルでもダイワロイネットホテルズは急拡大していて同社の躍進ぶりを肌で感じることができる。

 ここまで成長するにはM&Aが欠かせないところだが、意外にも同社がM&Aを本格化したのはここ最近のことである。2004年のグループ3社の完全子会社化以前は大規模なM&Aは行っていなかった。大規模なM&Aはこれ以降に加速している。業績もこれに合わせて急拡大している。

 04年3月期に売上高1兆2246億円、経常利益725億円であったのが、16年3月期には売上高3兆1929億円、経常利益2335億円と売上高は2.6倍、経常利益は3.2倍となっている。売り上げだけで見れば創業からおよそ50年かかったことが、その後のわずか12年でその1.6倍以上のことを成し遂げた計算になる。

 さらにこれを18年度(19年3月期)には売上高3兆7000億円、営業利益2800億円に引き上げるという中期経営計画を発表している。

■売上高・経常利益


 売り上げ・利益の伸長状況からは、同社がサブプライム危機(リーマンショック)後、東日本大震災後に積極的な投資を行っていたことがうかがえる。実際、コスモスライフ(売上高310億円)、フジタ(売上高3108億円)、コスモスイニシア(売上高802億円)といった大型買収はその時期に集中している。

 M&Aで成長する会社の中には、買収された会社の自治をことさら重んじて、社名をそのまま維持するケースも多いが、大和ハウス工業のM&Aでは買収後、比較的時間を置かずに社名変更を行っているケースが多いのも特徴だ。
■大和ハウス工業の主なM&A
 年月 事業分類 内容
1955.4 - 創業
1959.10 - 東京、大阪市場店頭承認銘柄として株式公開
1961.10 - 東京証券取引所に上場
1978.4 - 能登ロイヤルホテルをオープンし、リゾートホテル経営を開始
1980.8 - ホームセンター第1号店を奈良市にオープン
1983.5 - 中華人民共和国上海市において外国人宿泊用施設を建設。以後、中国事業を本格化

2004.2 ホテル ダイワロイヤルを完全子会社化
2004.9 金融 大和商工リース(売上高958億円)の株式を買い増し、出資比率40%に
2004.10 不動産 大阪丸ビルを15億円で買収(86%)
2005.3 物流 住友倉庫と業務資本提携(少額出資にとどまる)
2005.4 健康余暇 日本体育施設運営(NAS)(売上高104億円)を買収(86.9%)
2006.3 金融、インテリア、物流 大和ハウスグループ3社(大和商工リース<現・大和リース、売上高1120億円>、ダイワラクダ工業<現・デザインアーク、売上高395億円>、大和物流<売上高283億円>)を完全子会社化
2006.5 不動産 アイディーユーと業務提携
2006.10 クレジット クレディセゾンと合弁で大和ハウスフィナンシャルを設立(60:40)
2006.11 不動産 ユニクロと出店に関する業務提携協定書を締結
2006.11 電力 エリーパワーの第三者割当増資を引き受け、3億円を投じて31.25%を取得

2007.3 電力 エネサーブ(売上高258億円)の第三者割当増資を引き受けるとともに公開買付(TOB))を行い、買収。93億円で50.29%の株式を取得
2007.11 ホームセンター ダイヤ通商からホームセンター6店舗(売上高88億円)を買収
2008.3 事業施設 小田急電鉄から小田急建設の株式の33.1%を16億7000万円で買収
2008.7 電力 エネサーブ(売上高81億円)を完全子会社化(TOBで92.48%まで買い増し、103億円を投下)
2008.12 REIT モリモトアセットマネジメントを買収(73.5%)、同時にビライフ投資法人(現・大和ハウス・レジデンシャル投資法人)の出資口の10.27%を取得してビライフ投資法人のスポンサーとなる
2009.8 マンション管理 事業再生ADR中のコスモスイニシアからコスモスライフ(現・大和ライフネクスト、売上高310億円)を買収
2009.9 REIT 民事再生手続き中のJ-REITニューシティレジデンス投資法人のスポンサーとなる。60億円を払い込み、その後10年4月にビライフ投資法人(現・大和ハウス・レジデンシャル投資法人)に吸収合併

2011.6 REIT モリモトから大和ハウスモリモトアセットマネジメント(旧モリモトアセットマネジメント)株式を追加取得、出資比率は93.5%に
2012.11 - 大和ハウスリート投資法人が、株式会社東京証券取引所不動産投資信託証券市場に上場
2012.3 マンション管理 グローバルコミュニティ(売上高100億円)を買収(94.7%)
2012.6 介護 東京電力から東電ライフサポート(売上高14億円)を買収(100%)
2012.8 事業施設 フジタ(売上高3108億円)を500億円で買収(100%)
2013.6 パーキング ダイヨシトラスト(現・大和ハウスパーキング、売上高44億円)を27億円で公開買付
2013.6 不動産分譲 コスモスイニシア(売上高802億円)を第三者割当増資と既存株主からの取得により95億円で買収(63.25%)
2014.5 パーキング トモ(売上高32億円)を買収(91.37%)
2015.2 事業施設 大和小田急建設を株式交換により完全子会社化
2015.8 事業施設 大和小田急建設を完全子会社のフジタに吸収合併
<次のページ、電力小売りから介護、ロボットまで>

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大和ハウスはエリーパワーやサイバーダインに出資するなどベンチャー投資にも積極的。サラリーマンの経営者の中でも樋口会長のカリスマ性は際立つ。3年近く前のインタビューだが現在もまったく色あせていない。10兆円にはグローバルで戦えるサービスや商品が必要か。

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