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原子力機構、被ばく線量を正確に評価できる人体モデル開発
日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、放射線被ばくの線量を正確に評価できるポリゴン型人体モデルを開発した。そのデータをソースコード管理プラットフォーム(基盤)「GitHub(ギットハブ)」のウェブページ上に無償公開した。医療や原子力などの分野における被ばく線量の評価や、放射線防護の研究で活用が期待される。
被ばく線量は人体における臓器の形状や配置、密度などをコンピューター上に再現した人体モデルを使って評価する。原子力機構はこれまで「ボクセル」と呼ばれる直方体の体積要素を組み合わせて物体の形状を再現する技術を用いたボクセル型人体モデルなどを開発し、コンピューター断層撮影(CT)の診断による患者の被ばく線量評価などに利用してきた。
一方、国際放射線防護委員会(ICRP)は最新の科学的知見に基づき、水晶体や皮膚などの放射線感受性が高い幹細胞領域について被ばく線量を評価する必要性を指摘していた。ただ、それらはミクロサイズで構造が複雑なため、ボクセル型人体モデルでは再現できなかった。
そこで、原子力機構はポリゴン技術を活用して、標準的な成人日本人の体格や臓器の特性を反映した男性と女性の人体モデルを開発した。幹細胞領域などの複雑な構造をミクロサイズで再現し、被ばく線量をより正確に評価できるようにした。
日刊工業新聞 2024年11月14日
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原子力といえば原子力発電がイメージされますが、燃料電池や自動車エンジンの開発にも貢献する基幹技術です。イノベーション創出に向け、「原子力×異分野」の知の融合を推進する原子力機構の『価値』を紹介します