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原子力機構と東大、気体から固体への熱の伝搬過程解明

原子力機構と東大、気体から固体への熱の伝搬過程解明

水素の回転エネルギーが固体表面に移動する概念図(原子力機構提供)

日本原子力研究開発機構の植田寛和研究副主幹と東京大学の福谷克之教授は、気体の熱がどのように固体に伝わるかを解明した。分子の回転運動におけるエネルギー移動機構を明らかにし、金属表面の電子だけでなく格子運動にも移動することを示した。格子振動の大きさは元素の種類や構造に依存する。固体表面の原子種を変えることで、気体からの熱を伝わりやすくする、断熱性を高めるなど熱伝達の自在制御が可能になると期待される。

水素分子をパラジウム表面に吸着し、気体―固体表面間の回転エネルギーの移動を調べた。水素分子にはスピンの向きの違いから「オルト」と「パラ」の異なる回転エネルギー状態が存在する。オルトからパラへ状態変化する際に回転エネルギーを放出するため、状態変化を調べることでエネルギー移動が分かる。

パラジウム表面で表面温度を変えてオルトからパラへの変化率を測定した結果、温度が高くなるにつれ変化率は10倍程度上昇した。この温度依存性などから水素が持つ回転エネルギーの移動には固体表面の電子と格子振動の両方が関与していることが分かった。絶縁体などの場合は電子がないため全て格子振動に移動するが、金属においても格子振動が重要な役割を担うことが示された。

分子の運動には並進、振動、回転の3種がある。並進と振動運動のエネルギー移動機構は分かっており、気体の振動エネルギーは全てが固体表面の電子に移動することが知られる。

一方、回転運動はエネルギー量が小さく実験も困難で、移動の詳細は不明だった。

日刊工業新聞 2023年08月29日

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