消費電力を最小化…東芝D&Sが26年度実用化、「ノーマリーオフ型」GaNパワー半導体とは?
東芝デバイス&ストレージはゲート端子に電圧を加えていない時に電流を流さない「ノーマリーオフ型」と呼ばれる窒化ガリウム(GaN)パワー半導体デバイスを2026年度に実用化する。現在、GaNデバイスは電気自動車(EV)向けの車載充電器(オンボードチャージャー)などに利用される。消費電力を従来製品よりも最小限に減らせるノーマリーオフ型を訴求することで、生成人工知能(AI)で需要が増えるAIサーバーへの搭載を目指す。
GaNパワー半導体はスイッチング速度の速さが強み。高効率の電力変換が可能で、搭載する製品の高効率化・小型化が期待できる。主にサーバー用電源や次世代基地局、EVの車載充電器などで利用される。同半導体はゲート端子に電圧を加えないとオフ状態にならない「ノーマリーオン型」の特性を持っている。
東芝デバイス&ストレージの従来製品はGaN電界効果トランジスタ(FET)とシリコン(Si)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を組み合わせる。これを一般的なICで駆動制御する「疑似ノーマリーオフ型」だった。
今後同社が実用化を目指すノーマリーオフ型は、システムとしてノーマリー(動作中)でも本当に必要な処理以外は電源を遮断するため、消費電力を大幅に減らせる。SiMOSFETを使わず、GaN単体で高速スイッチングを実現し小型化する。
主に照準を定めるのは、生成AIの基盤モデルを学習・推論させるAIデータセンター(DC)だ。ノーマリーオフ型GaNデバイスを搭載することで、サーバー電源を小型化できると見込む。また高効率な電力変換を生かし、サーバーの消費電力削減に貢献できる点を訴求する。
AIは学習・推論の度に多くの電力を使用する。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、DCによる消費電力量は22年に約460テラ(テラは1兆)ワット時になったという。26年には620テラ―1050テラワット時まで増える見通しだ。AIの利用が広がる中、AIサーバーの消費電力削減は喫緊の課題になる。