多様な業務支援の“相棒”…リコージャパンが注力するAIサービスの強み
リコージャパンは人工知能(AI)ソリューション事業に力を入れている。リコーは画像・空間認識や自然言語処理のAI技術と、AI導入の前提となる情報の整理や業務プロセスのデジタル化といったサポートもできるのが強み。さらに、自社で実践した事例を顧客に展開することで「使える・使いこなせるAI」の提供を目指している。
「RICOH デジタルバディ」は「AIが自分の相棒のように業務遂行を支援してくれる」というコンセプトで6月末に提供を始めた。利用者の質問に対して生成AIが企業内のナレッジ(知識)を活用して最適な回答を作成し、利用者に返すことができる。回答の基になる情報は規定や過去事例、業務報告書といった既存文書のアップロードで連携可能だ。検索拡張生成(RAG)の活用でAIの回答精度も高めている。
アップロードする情報は用途ごとに登録可能なため「経理業務の問い合わせ対応」「営業支援」など、さまざまな業務で活用できる。強化したノーコードツールにより各部門で簡単にAIが作れ、アクセスコントロールも可能だ。自社ではベータ版を5月ごろから一部の部門で使用。若手社員が先輩に相談するようにAIを使い、提案の品質向上につながっているという。
8月中旬からは社内営業支援(SFA)・顧客情報管理(CRM)システムを全国48支社で導入し始めた。もともと自社開発したSFA・CRMシステムを使用していたが、事業内容の変化などから同システムの改修が急務となっていた。
米マイクロソフトの業務用アプリケーション「ダイナミクス365」を使った新システムに自社開発のAIを搭載した。顧客セグメントごとの販売実績や顧客の購買履歴、営業担当者の日報、市場トレンドといったデータを活用・分析して、顧客にお薦めの商品やサービスを提案する。日報などの文章から重要な箇所を抽出できるよう学習したAIなどを採用した。ゆくゆくは外販も見据える。
AIを使い分けて生産性を向上させる取り組みを進める一方、デジタルサービス企画本部AIソリューションセンターの児玉哲センター長は「AIが自律的に動いて仕事をする世界が来る」と強調する。例えば、利用者が司令塔のAIに「事故の発生について教えて」と質問すると、司令塔AIは安全や品質、分析などの各専門家AIに問いかけて原因を探ったり解決策を導いたりしてくれるという。現在、複数の顧客と概念実証(PoC)を進めている。