暑さ対策で大市場狙う…大ガス発新興が提案、独自「放射冷却材」の機能
大阪ガス発ベンチャーのSPACECOOL(スペースクール、東京都港区、末光真大最高経営責任者〈CEO〉)は、独自の放射冷却素材を建物の屋根や壁面などに重点的に提案する。電気などのエネルギーを使わずに温度を下げる独自技術を工場や商業施設などに訴求。折板屋根や屋上防水シートなどの国内市場で、将来的にシェア1割を狙う。暑さ対策のニーズが高い東南アジアや中東でも同様の提案を強化し、2026年をめどに海外売上高比率50%超を目指す。
スペースクールはファブレス経営により、経営資源を研究開発や営業活動などに集中させている。製造した放射冷却素材をパートナー企業の既存製品と組み合わせる形で、製品展開のバリエーションを増やしてきた。
これまでは、受変電設備など屋外設置機器が熱で故障するのを防ぐ用途での提案が多かった。改良により放射冷却素材の耐久性が高まったことを踏まえ、今後は工場や商業施設の建物など、市場規模が大きい分野への提案を強化する。
既に「ルーフシェード」と呼ばれる工法で折板屋根へ施工するシートを手がける日本ワイドクロス(大阪府柏原市)や、防水シートを展開するロンシール工業などと連携した納入実績がある。今後は同様のパートナー連携を増やす考え。
また東南アジアや中東などの海外販売も強化し、グローバル展開を本格化する。当面は日本からの出荷を想定するが、将来は現地生産も検討する。
スペースクールの放射冷却素材は、熱エネルギーを「大気の窓」と呼ばれる透過率が高い赤外線の8マイクロ―13マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の波長域に変換し、宇宙空間に逃がすことで冷却する。放射冷却は一般的な自然現象で、夜間に気温が下がるのも同現象が一因。独自の素材を層状に構成することで、日中でも太陽光の入熱よりも放射冷却による出熱を大きくできるようにした。
同社は大ガスの研究開発から生まれた新技術を事業化するため21年に設立。出資比率は米国と日本が拠点のベンチャーキャピタルのWiL(ウィル)が51%で大ガスが49%。25年大阪・関西万博で日本ガス協会が出展する「ガスパビリオン」のテントの膜材にも採用された。