放射冷却で24時間発電…物材機構が最先端「熱電変換システム」開発
IoTセンサーに提案
物質・材料研究機構の石井智チームリーダーらは、放射冷却による温度差で24時間発電する熱電変換システムを開発した。太陽電池の機能しない夜間に約0・2ミリボルト程度の起電力を得た。微小だが常に電力を発生する特性を利用し、IoT(モノのインターネット)センサーなどの電源に提案していく。
黒い板と透明な板の間に透明な熱電変換素子を配置する。すると日中は黒い板が太陽光を吸収して温まり、夜間は放射冷却で冷えて温度差ができる。この温度差を利用して熱電変換素子で熱の流れを電流に変える。
熱電変換素子一つで実験すると、日中は1・5ミリボルト程度、夜間は0・2ミリボルト弱の起電力が得られた。熱電変換素子を増やせば発電量を増やせる。放射冷却自体は昼夜関係なく起き、太陽光を吸収しない透明素材は冷え続ける。そのため24時間発電することになる。
この原理を実証するために透明な熱電変換素子を開発した。熱電変換素子自体が温まらないため、放射冷却による温度差をフル活用できる。原理が単純なため応用が広い。
IoTセンサーの進歩で駆動に必要な電力は小さくなっている。無線通信などの電力が必要な機能は日中の大きな電力を利用し、夜間はセンシングのみに留めるなど、運用の工夫で微力な電源で稼働させることも可能になりつつある。
ただ電圧変動がノイズになりかねないなどの課題があり、実用化に向けてデバイス研究者との連携が必要になる。今後、熱電素子の耐久性と発電力の向上、結露などへの対応を進める。
日刊工業新聞 2023年11月02日