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日産が採用した放射冷却素材、効果高める技術の中身

ラディクールが拡販、塗料・生地・フィルムなど多用途展開
日産が採用した放射冷却素材、効果高める技術の中身

ラディクールは日産自動車の純正アクセサリーの素材としても採用された

ラディクールジャパン(東京都中央区、何軍社長)は、物体が外に熱を出すことで冷える放射冷却現象を活用した素材「Radi―Cool(ラディクール)」を夏季の暑熱対策として拡販する。屋外用機材や衣類、建物の屋根塗装などの用途を想定。塗料や生地、フィルムなど、顧客の用途に応じて多様な素材を提供できる点で競合と差別化する。日産自動車と共同で実施した性能試験では、屋外使用時の耐久性や耐候性を確認した。数年内に同素材の年間売上高で2022年度比20倍の20億円を目指す。

ラディクールは「放射冷却メタマテリアル」と呼ぶ技術を採用している。通常、放射冷却は熱を電磁波として放出するが、大半は地球の大気に吸収され、宇宙空間に放出される熱は限られる。これに対し同技術は材料の組成や構造を微細に調整することで、電磁波の放射を大気に吸収されにくい8マイクロ―13マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の波長帯に集約。熱を効率良く逃し冷却効果を高める。

ラディクールの塗料缶

すでに放射冷却素材として日傘や帽子などに使われている。21年には日産がサンシェードなど自動車用純正アクセサリーに同素材を採用した。また国内12カ所の空港で同素材を使ったフィルムや塗料の採用実績がある。

日産とは自動車用放射冷却部品の共同開発契約を締結。塩水噴霧による塗料の密着性検証や、キセノンランプ照射による耐候性検証などの試験の結果、これらの性能を損なわずに冷却効果を維持できることを確認した。こうした試験結果も、同素材の拡販材料とする考えだ。金属機材やモルタルなどで使用可能な商品を開発する予定もある。

日刊工業新聞 2023年07月06日

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