住友化学・三菱ケミカル・旭化成…半導体材料、重要性増す後工程に照準
足踏みが続いていた半導体市場は回復が本格化する見通しだ。2023年12月に国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が示した予測によると、半導体市場は30年に21年比約2倍となる1兆ドル(約160兆円)規模に達するとみられる。
こうした需要の動きを捉え、化学各社は関連材料の増産投資を活発化している。住友化学はフォトレジストで大阪工場(大阪市此花区)や韓国子会社の東友ファインケムを増強し、24年度には生産能力が21年度比2倍となる見込みだ。三菱ケミカルグループは北九州市の九州事業所でフォトレジスト材料の新工場を建設。三井化学は山口県の岩国大竹工場でカーボンナノチューブ(CNT)を使ったペリクルを量産する。
一方で半導体の進化に伴い、前工程での回路を微細化することが物理的に難しくなってきているのが課題だ。そこで複数の半導体チップを積層するなど、後工程の重要性が増している。
旭化成の電子材料などを扱うデジタルソリューション事業は、同社が新たな事業の柱に育てようとしている分野だ。同事業は30年度をめどに22年度比約2・5倍の売上高3000億円を目指す。山岸秀之専務執行役員は「電子材料では半導体パッケージが重要となる。基盤を固め、拡大していくための投資や強化を進める」と力を込める。
特に半導体チップなどの表面を保護する感光性絶縁材料「パイメル」は、新たな工場や品証棟を静岡県富士市の拠点に整備する。パイメルの生産能力は倍増を見込む。ただ、30年度をめどにパイメルの売上高を22年度比で倍増させるためには「もう一段の拡大が必要とみている。市場の状況を見ながら検討する」(植竹伸子上席執行役員)と、次なる投資機会をうかがう。電子材料では人工知能(AI)を駆使するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)による開発の効率化などで、製品の競争力を高める構えだ。
レゾナックも足元で半導体需要をけん引しているAI向けの半導体材料として、絶縁接着フィルムと放熱シートの生産能力を強化する計画。強みの後工程材料で先端技術の開発に取り組むほか、さまざまな研究開発コンソーシアムでの活動も積極化する構えだ。
後工程は、住友化学や三井化学も新規材料の開発などに力を入れる。信越化学工業は後工程向けに半導体パッケージ基板製造装置と新工法を開発した。化学各社は半導体関連を成長ドライバーとし、得意分野を生かしつつ需要を取り込む。
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