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欧州の規制迫る…車に再生材、化学メーカーが挑む環境負荷低減

化学メーカーの持続可能性(下)
欧州の規制迫る…車に再生材、化学メーカーが挑む環境負荷低減

住友化学がリバーと連携したマテリアルリサイクルの取り組み例

化学業界では脱炭素対応を踏まえ、持続可能な競争力を発揮するためにリサイクル技術の開発が活発化している。主に廃プラスチックを化学的に分解するケミカルリサイクル(CR)と、廃棄物を同じ製品の原材料にするマテリアルリサイクル(MR)で、用途に合わせて各社の対応が進む。例えば三井化学はCFP(広島県福山市)と連携し、廃プラ分解油によるCR製品の製造を開始した。

ただ、リサイクル品はバージン品に比べてコストが高いなどの課題がある。コストについては消費者を含め、社会的に受容されるかが普及には欠かせない。だが「客観的な環境価値の見える化がないといけないが、まだそのルールづくりもできていない」(住友化学の岩田圭一社長)状況だ。環境価値のあり方などを、業界内外で明確にしていく必要がある。

一方、リサイクルに関する要求が高まっているのが素材の供給先である自動車関連。特に、環境意識の高い欧州では顕著だ。欧州委員会が検討する規制案では新車の製造に使用されるプラの25%にリサイクル材を使用することが義務付けられ、そのうち25%は廃車部品からリサイクルされなければならないという。本格的な施行は2030年以降になるとみられるが、潮流はグローバルで広がる可能性がある。化学各社からは、対応に向けた準備が重要との声が聞かれる。

住友化学はリサイクル企業のリバー(東京都墨田区)と、廃車のプラを活用するMRで連携する。リバーの持つ廃車の回収・選別ノウハウ、住友化学が有する素材のペレット化や混練樹脂(コンパウンド)技術を組み合わせて、自動車業界が求める高品質な再生プラを生産する。

住友化学は1月から高度な選別ができるパイロット設備を整備しており、条件を見つつサンプルワークに取り組む構えだ。自動車関連企業への本格的な供給は25年後半めどと見据える。

旭化成はポリアミド66についてマイクロ波化学と連携し、マイクロ波を用いて廃エアバッグなどから再利用するCR技術の実用化を目指す。三菱ケミカルグループも廃車からアクリル樹脂製のテールランプのレンズを回収し、CRした原料を利用して成形材料「アクリペット」を作るなど取り組みを積極化する。

グローバルで広がる環境負荷低減に向けたリサイクル対応と、リサイクル製品の社会受容性の訴求を同時に進めていくことが、化学製品の持続可能性を高めることにつながりそうだ。(山岸渉が担当しました)


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日刊工業新聞 2024年06月28日

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化学メーカーの持続可能性
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化学大手各社による次世代成長基盤創出の動きが活発になってきた。有望視する分野は水素関連から半導体材料、環境負荷低減に資するリサイクル関連までさまざまで、こうした多彩な技術が化学業界の強みと言える。各社の動きを探る。

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