低温域で高い熱電変換性能、岡山大が「CNT糸」作製
岡山大学の亀高諄大学院生(研究当時)と鈴木弘朗研究准教授らは、150度C以下の低温域で高い熱電変換性能を示すカーボンナノチューブ(CNT)糸の作製に成功した。工場や車体などからの未利用の低温排熱を有効利用できる。超軽量で柔軟性や人体適合性が高いため、ヒトなど全てがつながる次世代のIoE(インターネット・オブ・エブリシング)デバイスや宇宙など極限環境での利用が期待される。東京工業大学、中国・南方科技大学との共同研究。
CNTを束ねたCNT紡績糸を通電加熱処理により高結晶化し、効率的に半導体材料中の自由電子の数を増加させるn型ドーピングの手法を開発した。
高結晶化と最適なドーピング処理を組み合わせることで、温度差による起電力を表すゼーベック係数や導電率が向上。熱電変換性能の指標となるパワーファクターは、室温付近の30度Cで1534マイクロワット毎メートル毎ケルビン(マイクロは100万分の1)、200度Cで2800マイクロワット毎メートル毎ケルビンだった。
また、大気安定性が高く、2カ月後もパワーファクターは4%しか低下しなかった。一般的なn型ドーパント高分子では55%低下した。
このCNT紡績糸を柔らかい素材に巻き付け、両側をp型とn型にドーピングしてπ型の熱電変換モジュールを作製し、実際に低温域で電力を取り出せることを実証した。
これまで低温域での熱電変換材料として、セレン化ビスマスなどの無機材料が検討されてきたが、毒性や加工性・柔軟性の低さが課題だった。
日刊工業新聞 2024年5月2日