リチウム電池材料に…廃プラからCNT、キヤノンが実用化へ
キヤノンは廃プラスチックからカーボンナノチューブ(CNT)を製造することに成功した。CNTの材料である化学原料に代わって廃プラを熱し、発生させた炭化水素ガスで製造する。今後、量産技術を確立して3―5年後の実用化を目指す。開発に成功すると、廃棄されるプラからリチウムイオン電池(LiB)などに使われる高機能素材を生み出せる。
キヤノンの米国製造・開発拠点のキヤノンバージニア(バージニア州)が、米ノースイースタン大学(ボストン市)のヤニス・レベンディス教授(機械工学)との共同研究で開発した。化学気相成長法(CVD)を活用し、廃プラの熱分解によって発生した炭化水素ガスを回収し、金属触媒によって複層CNTを作る。
通常のCVD法によるCNT製造では、アセチレンなど炭素を含むガスを投入して触媒の金属にCNTを成長させる。レベンディス教授らは廃プラから発生させた炭化水素ガスをアセチレンの代替にするため、炉内の温度やガスの流速を検証しCNTの合成条件を見いだした。
量産化向け、大型の炉内で廃プラを均一に熱する方法を研究する。開発後はCNTメーカーでの技術の採用を見込む。キヤノンバージニアはキヤノン製品のリサイクル事業も担当しており、劣化して使えなくなった廃プラを付加価値の高い素材に変換できるようになる。
CNTは炭素原子が網目に結びついた筒状構造で、直径はナノメートル単位(ナノは10億分の1)。軽量でありながら、高強度で柔軟性がある。電気や熱を伝える性能に優れており、レアメタル代替として電子機器に使われる。最近では、LiBの性能アップに欠かせない材料として需要が高まっている。
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日刊工業新聞 2023年10月24日