ニュースイッチ

三井物産が米で中古トラック売買参入、狙う相乗効果

三井物産が米で中古トラック売買参入、狙う相乗効果

三井物産が買収した米テイラーの中古トラックオークション拠点

三井物産は米国の中古トラックの売買事業に本格参入する。電子商取引(EC)の増加や老朽インフラの整備で米国の貨物輸送需要が拡大する中、同社は23日、トラックオークション大手の米テイラー・アンド・マーティン(ネブラスカ州)を買収したと発表した。北米で三井物産が展開するトラックのリース・販売事業と連携してトラックの流通力に厚みを持たせるなど、相乗効果の発揮も狙う。産業ネットワークを生かして米国で好調なトラック需要を取り込む。(編集委員・田中明夫)

三井物産はテイラーの株式100%を300億―400億円で取得した。同社が持つ中古トラックのオークション会場の増設やオンライン売買サービスの拡充を後押しする。

テイラーは北米に10拠点程度持つオークション会場やオンラインサイトを通じて、中古トラックの売買を仲介する。大型トラックやトレーラーなどの取扱台数は年間2万台、取扱高は同4億―5億ドルに上る。

米国でトラック物流は、貨物輸送の金額と重量ベースそれぞれで7割程度を占める主要輸送手段となっている。米運輸省によると、2045年には米国の輸送貨物量は20年比3割増の252億トンに達すると見込まれ、トラック輸送も同3割増の164億トンと順調に拡大する見通し。

足元ではコロナ禍に伴う巣ごもり需要の収束後も、電子決済サービスの拡充などを背景にEC需要が好調を維持。また米国では21年にインフラ投資雇用法が成立し、政府支援によって老朽化した道路や橋梁の再建工事の需要も高まり、商品や資機材などの輸送需要の拡大が見込まれる。

三井物産は15年にトラックのリース・レンタル事業を手がける米ペンスキーグループに出資参画するなどして、北米で自動車事業を拡大してきた。

三井物産の23年3月期連結決算では、ペンスキーグループのトラックリース事業の取り込み利益は前期比49%増の425億円となるなど好調に推移している。

今後はリース・レンタル事業からテイラーの中古トラック事業へと商品を流通させるなどして品ぞろえを拡充し、物流会社のニーズへの対応力を高める。三井物産は「北米自動車事業とのシナジーを創出し、北米自動車事業群を形成することで、持続的な収益基盤の形成を実現する」としている。

三井物産は中期経営計画で、グローバルな事業ポートフォリオの隣接領域で事業群の形成を進める戦略を展開。北米で自動車事業を拡充し、トラックの安定供給基盤の構築を図る。

日刊工業新聞 2024年4月24日

編集部のおすすめ