三井物産は再び上方修正・三菱商事は投資余力膨らむ…大手商社7社の業績底堅く
大手商社の2023年4―12月期連結決算(国際会計基準)が6日までに出そろい、2社が24年3月期業績予想を上方修正し、5社が据え置いた。部材不足の緩和に伴う自動車や建設機械事業の好調などが業績の底堅さにつながっており、三井物産は2度目となる通期業績予想の上方修正を行った。三菱商事は各事業の着実な利益の積み上げが進み、成長投資の余力が膨らんでいる。資源高で最高益が相次いだ23年3月期の勢いは後退したが、25年3月期以降の成長に向けた動きも活発化している。
三井物産は23年4―12月期の当期利益が前年同期比13・6%減の7264億円と落ち込んだが、業績の順調な進捗(しんちょく)を踏まえ、24年3月期業績予想を前回公表比100億円増の9500億円に上方修正した。鉄鉱石価格の上振れに加え、自動車関連事業の好調などを考慮した。「グローバルかつ幅広い産業にまたがる事業ポートフォリオの良質化を通じ収益機会を着実に捉えられた」(重田哲也最高財務責任者〈CFO〉)。
丸紅は建設機械や自動車の販売増に加え、英国の再生可能エネルギーの小売り事業の好調が業績を支える。伊藤忠商事は国内消費の復調を捉えて食品流通などの事業が好調なほか、100%子会社化した伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がデジタル変革(DX)需要を捉えて収益に貢献する。非資源分野の底堅い収益基盤に加えて「投資案件の収益の進捗もある」(鉢村剛CFO)とし、3期連続の当期利益8000億円台が視界に入ってきた。
三菱商事は通期業績予想を据え置いたが、過去最高の前年に次ぐ高水準の当期利益に向けて着実に利益が積み上がっている。5000億円の自己株式取得による追加の株主還元を6日に決定したほか「規模感のある戦略的M&A(合併・買収)の案件も見えつつある」(中西勝也社長)とし、中期経営計画の3兆円の成長投資枠の拡充も示唆した。
住友商事は24年3月期を最終とする中期経営計画で、低収益事業を売却して成長分野に事業をシフトする戦略を進めてきており、500億円のバッファーを残したまま通期業績予想を据え置いた。24年3月期末にかけても「(不採算の)事業の撤退を含む損失の形があり得る」(諸岡礼二CFO)とし、事業ポートフォリオの改革を推進する。
資源価格の落ち着きが収益を圧迫するが、各社とも幅広い事業群が収益機会を捉えて高水準の業績を保っている。再生エネやDXなどの成長分野の収益貢献もみられ、稼いだキャッシュの追加投資の行方が注目される。