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パナソニック・三菱電機…家電リサイクル技術拡充、ビジネス機会狙う

パナソニック・三菱電機…家電リサイクル技術拡充、ビジネス機会狙う

パナソニックと平林金属が開発を進める大半のエアコン室外機の解体に対応するロボット

家電はエアコンとテレビ、冷蔵庫、洗濯機の4製品のリサイクルが義務付けられている。家電メーカーがリサイクルしやすい製品の開発に加え、リサイクル工程に貢献する技術開発にも取り組む事例が出てきた。さらにその技術を広く展開することも見据える。(編集委員・安藤光恵)

パナソニックロボで自動解体

パナソニックはリサイクル業者の平林金属(岡山市北区)と連携してロボットを用いた「廃家電自動解体システム」を開発した。エアコンの室外機を迅速に解体する。平林金属の平林実社長は「エアコンは最も台数の多い家電で、将来は大量のリサイクル需要が出てくる」と指摘。パナソニックビジネスプロセスイノベーション本部の高田宏規本部長は「人手不足の中、効率的で長期安定的なリサイクルを実現する技術が必要だ」と力説する。

エアコンはメーカーによって部品の位置など構造が異なり、同一メーカーでも製造時期の違いでバラつきがある。そこで切断や取り出しなどの作業はロボットアームで行い、それを補助する固定装置を開発した。構造の異なる室外機を外形から把持すべき位置を決定し、解体中の変形にも対応。ビスの締結位置へ順に力を加えて解体しやすくする。外装剥がしからコンプレッサー取り出しまでの工程を76秒で完了する。

今後、測定や固定、排出を含めた全ての処理で1台90秒以下を目指す。他の家電リサイクル品目への展開や、家電リサイクル以外での応用も行い、他社への販売も想定する。

三菱電機 プラ分別事業化

三菱電機の静電選別のイメージ。プラスチックの種類ごとに電極への引き寄せられ方が変わるため分別容器の仕切り位置の調整が必要になる

一方、三菱電機は自社製品の家電で行ってきたプラスチック分別技術の事業化が見えてきた。プラスチックをリサイクルするには種類別に分ける必要がある。そこで帯電を利用する独自のプラスチック静電選別装置の販売から遠隔制御、保守、選別後の活用助言を一括して行うサービスを2024年度に開始予定。新車で使うプラスチックの25%以上を再生品と定める欧州の自動車設計・廃車(ELV)規則案の影響で、既に自動車業界からの問い合わせが相次いでいる。

販売する選別装置には自動制御する「スマート分別」機能を搭載する。静電分別はプラスチックの種類によって帯電状態が異なり、電極へ引き寄せられる強さも変わるため、分別容器の仕切り位置を調節する必要がある。同社先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)の中村保博環境・分析評価技術部専任は「適切な仕切り位置でないと選別の効率が悪くなるが、仕切りを動かす幅の見極めが難しい」と説明する。自社では手動でも蓄積したノウハウで対応できるが、他社へ展開するには自動化が不可欠と考えた。

パナソニックと三菱電機はともに、将来にわたるリサイクル関連の需要拡大を見据えている。社会的責任を果たすと同時に、自社のビジネスの機会にもつなげていく構えだ。ユーザーとなる他の企業にとってもリサイクル対策は課題だ。家電業界にはリサイクル関連技術をけん引する役目が期待される。


【関連技術】 パナソニックも注目する元白熱電球メーカーの変身ぶり
日刊工業新聞 2024年03月28日

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