理工系学部「女子枠」応募、定員以上が63.2% 推進・新設を後押し
理工系学部の2024年度「女子枠」入試への応募は、定員を上回るか同数程度の大学が多かったことが山田進太郎D&I財団の調査で分かった。「逆差別だ」「能力が不十分だと見なされるため女子も嫌がるのでは」などの声がある中、対象者の前向きな姿勢が判明。女子枠の推進や新設を考える大学を後押しする結果となった。
調査は1―2月にインターネットなどで実施。理工系学部で女子枠を導入する大学40校のうち、回答が得られた24校の有効回答を分析した。
24年度入試では、結果非公表などの5校を除く19校のうち、63・2%に当たる12校が定員を充足。実施初年度の大学においては高校への広報不足などが課題となった。
女子枠入試の導入時期は「23年度以降」が24校中21校。多様な入試を推奨する22年の文部科学省通知が影響していると見られる。
それ以前に導入した3校のうち、兵庫県立大学では女子比率が8年間で10%から15%に向上した。芝浦工業大学は「進学相談会の参加者の半分を女子が占めるなど層が変わった」と実感。「約半数の女子が大学院に進学した。意欲的な学生が確保できた」などの声もあった。
効果への期待は、「多様性と活性化」(有効回答の87・5%)、「優秀な女子学生の獲得」(同83・3%)、「ジェンダーバランス改善」(同79・2%)が挙がった。
一方で女子枠に対して「学内外からの否定的なコメントがあった」のは45・5%。制度の目的や必要性が十分に理解されていない状況だ。トイレやロッカールームの充実など入学後の課題もある。
調査結果の発表会見に出席した文部科学省の平野博紀大学入試室長は「注意しながら情報発信する必要がある」と説明。前田裕子九州大学理事(旭化成取締役)は、「人数が少ないと『女性だから』と否定されがちだ。女性も多様だと理解してもらうためにも、人数を増やす必要がある」と強調した。