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学生が「大学アプリ」開発、学内アルバイトの選択肢に

学生の「大学アプリ」開発 教・職・学の協働で人材育成を 論説委員・山本佳世子

大学生の学内アルバイトは図書館窓口や授業支援などがあるが、今後はアプリケーション開発が広がるのではないか。芝浦工業大学は全学の学習管理システム(LMS)向けのアプリを学生が開発した。時間割や課題締め切り通知、教室確認などの追加機能で、学生と職員が連携し大学公式アプリとして公開した。学生が自身のニーズに基づいて開発し、コミュニティーを変える体験は人材育成の点でも興味深い。

学生のアプリ開発は他大学でもあるが非公式利用が大半だ。トラブルやメンテナンスなど不安が多いためだ。今回は学生が「ダメでもともと」と大学に採用を持ちかけ、共同開発の逆提案となった。学生2人が1年強をかけ、セキュリティーや動作の不安定さを改善して完成させた。

この「アプリエンジニア」の今春の追加募集は競争率が19倍と大人気だったことから、計6人に増やす結果となった。

学外の反響は会員制交流サイト(SNS)で広がった。プログラマーの技術情報共有サービス「Qiita」で経緯が明らかにされ1000以上の「いいね!」が付いた。X(旧ツイッター)の拡散につながり閲覧は約30万回と、通常の大学広報では難しい数値をたたき出した。提案学生と受け入れ大学の両方が支持されている。

情報スキルの発揮を望む学生に対し、インターンシップ(就業体験)は実務経験が条件で、活躍の場は授業課題やコンテストに限られがち。しかし同大情報イノベーション部の我妻隆宏次長は「内製化に慣れている職員が指導するなら、他大学でも可能だ」とみる。フラットなつながりからイノベーションが生まれる時代、教員・職員・学生による“教職学協働”を進めたい。

日刊工業新聞 2024年02月26日

芝浦工大、大学生活に役立つアプリ 学生バイト開発者増強

芝浦工業大学は大学生活に役立つアプリケーションを開発する学生アルバイト「アプリエンジニア」の採用を拡大する。時間割や課題の締め切り通知などの情報が入手できるとして学生に人気のアプリを、職員と連携した大学の公式アプリとして整備。学生のニーズへの対応とエンジニアのキャリアに向けた人材育成におけるメリットを確認した。会議室・教室の予約など新機能の開発に向け、アプリエンジニアを倍増の4人体制にする。

芝浦工大の学生生活に必要な情報を入手するアプリは元々、学生が自主制作し一部で使われていた。

同大は公式化するため、2022年に学生アルバイトとして採用。職員とともに開発を進めた。

23年4月に公式版アプリ「ScombApp」(スコームアップ)を実用化し、時間割や課題・提出物の確認などに有効との声が利用学生から挙がった。11月末までに累計8000ダウンロード以上を記録。担当した工学部情報通信工学科4年生の佐藤衝平さん、乙戸慎太郎さんがエンジニアとしての達成感を感じるなど、教育的効果も確認された。

これを受けて2人の追加募集を始めた。学生を大学の構成員として巻き込む「教職学協働」で、理工系学生のスキルを活用した事例だ。

関連記事:学生が〝パートタイムプログラマー〟に…電通大発スタートアップの「橋渡し」が軌道に乗ってきた

日刊工業新聞 2023年12月7日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
学生が大学関連のアプリ・ソフトを開発する活動は今後、広がっていくに違いないと感じています。大学側から芝浦工大では情報担当部署の職員が、また以前に執筆した電通大の記事では教員が、それぞれ学生の指導に携わっています(電通大はベンチャー化している)。理工系大学なら、独自にアプリ開発をしていたという学生が低学年でも散見されます。今の高校生は情報科目が必修になっており、さらにベースは広く、同様の事例が多様な大学で出てくることでしょう。

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