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学長がトップセールスで“卒業生社長”狙う、上智大がリカレントで新規10社と交渉

学長がトップセールスで“卒業生社長”狙う、上智大がリカレントで新規10社と交渉

リカレントは異業種の受講生との議論が魅力の一つ(上智大提供)

上智大学はリカレント(学び直し)教育「プロフェッショナル・スタディーズ」において、2024年度の新規受講企業獲得に向け約10社と交渉している。講座設計にも関わる企業は、2020年度の開始時の18社から23年度には29社に増えたが入れ替わりもあり、曄道(てるみち)佳明学長のトップセールスで卒業生が社長を務める企業を狙う。国際性とリベラルアーツ(教養)を特色とする同大が、企業人の実践的な教養としてのリカレントを産業界に浸透させられるか注目される。

上智大のプロフェッショナル・スタディーズはビジネスパーソンが対象。海外の社交の場で語られる政治や文化、哲学などの教養に関する土台を豊かにし、異業種の受講生との議論を通じてビジネスの新発想を引き出すという内容だ。リカレントはビジネススキル型か市民講座型が多い中で異色の設計だ。中心となるのは、企業が2年間に計500万円払うと、年間26人・講座が受講できるプランだ。

23年度の延べ受講者数は約660人。企業の要望を受け、英語で学ぶ環境・国連の持続可能な開発目標(SDGs)系の講座を新設、交渉力や質問力などのコミュニケーション系の講座を拡充した。

セブン&アイ・ホールディングスのリクエストで、カスタマイズ(個別対応)した講座も販売した。数値重視のビジネス発想を越えるための“哲学的対話”講座などを同社グループの役員約220人を対象に実施した。

同大は受講の中心となる企業の適正規模は30数社としている。2年の期間終了で離れる企業もあるため、安定運営に向け新規会員の獲得に動く。これまでは経団連や経済同友会のネットワークを使い、曄道学長のトップセールスで営業してきた。さらに近年増えている、卒業生が社長に就いている企業を重視し、アプローチしている。

日刊工業新聞 2024年02月23日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
学長トップセールスは産学連携の大型寄付集めで広く行われていますが、上智大のような本格的で高額なリカレントもターゲットなのですね。これまで、あまり念頭にありませんでした。またリカレントのうち、特定スキルの向上だけでなく、役員ら幹部クラスの質を高める目的で、企業が資金を出すようになっているとのこと。他のリベラルアーツ系大学でも耳にして、これも意外でした。時代は変わっているのですね。

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