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パワー半導体の注目材料「SiC」でシリコンの牙城「LSI」に挑む
半導体再興へー大学の最先端研究 #9
一貫体制生かし「ファブ」拠点へ
広島大学は2024年度にスーパークリーンルームを刷新し、半導体の新研究拠点を整備する。23年には「せとうち半導体共創コンソーシアム」を開設。マイクロンメモリジャパン(広島県東広島市)などと連携し、産学官で次世代半導体の開発に取り組む。
同大ナノデバイス研究所の黒木伸一郎教授は炭化ケイ素(SiC)を使った半導体を長年研究する。SiCは新幹線や電気自動車への実装が進むパワー半導体の材料として注目されるが、黒木教授が目指すのは、シリコンの牙城である大規模集積回路(LSI)をSiCで作ることだ。
シリコンと異なり、SiCは高温下でデバイスを作製する必要があり、特殊な環境が必要。同大にはリソグラフィーからエッチング、薄膜形成などの各種装置群がそろう。「SiCデバイスの設計から試作、評価まで一貫して行える環境は国内の大学ではここしかない」(黒木教授)。
黒木教授は500度Cでも駆動可能なSiCの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路やメモリー、世界初のSiC製CMOSイメージセンサーなどを開発した。
SiC半導体は高温や高電圧、放射線に強く、宇宙探査機や原子力発電所、核融合炉など極限的な環境で使える。黒木教授は「SiCはパワー半導体だけではない。例えば、車載用などでシリコンLSIでは必須だった冷却装置がSiCに換えることで不要になり、その分、全体のシステムを小型化できるなど可能性が広がる」と強調。多くの研究者が使える「SiCファブ」として拠点づくりを急いでいる。
日刊工業新聞 2024年02月08日
特集・連載情報
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。