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SiCパワー半導体競争激化…業界注目・ロームの戦略は?

SiCパワー半導体競争激化…業界注目・ロームの戦略は?

ロームが手がけるSiCウエハー

世界的な脱炭素化の流れを追い風に市場が急拡大し、国内外の半導体メーカーが相次ぎ増産投資に踏み切る炭化ケイ素(SiC)パワー半導体。SiC国内シェア首位のロームも大規模投資を計画する。そんな同社が競合に対して優位性を持つのがSiCウエハーの製造技術。2024年内の稼働を目指す新工場(宮崎県国富町)では、同社として初のSiCウエハーの国内生産に乗り出す。同社の戦略に業界が注目している。(京都・小野太雅)

SICパワー半導体の市場シェア

「ロームはこれからどう動く?」(半導体メーカー大手幹部)。

日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業連合が約2兆円を投じた東芝株のTOB(株式公開買い付け)に参画し、3000億円拠出。出光興産子会社から同社の旧国富工場(宮崎県国富町)を取得し、200ミリメートルSiCウエハーに対応した半導体新工場として3000億円規模の投資を計画―。ここ最近、ロームの積極的な投資姿勢に半導体業界の注目が集まっている。

同社の主力事業であるパワー・アナログ半導体市場は、自動車や産業機器の電装化・電動化により市場が拡大している。中でも成長著しいのはSiC半導体だ。一般的なシリコン製半導体より電力効率に優れた特性を持つことから、電気自動車(EV)向けの需要が増えている。

ロームはSiC半導体の増産に向けて21年度から27年度の7年間で約5100億円を投じる計画。25年度までにSiC半導体の売上高を従来計画比約18%増の1300億円超に引き上げ、世界トップシェア30%を獲得。27年度には22年度比約9倍となる売上高2700億円超を目指している。

ただ、同市場では競合も大規模投資を計画する。国内では三菱電機が約1000億円を投じて、200ミリメートルウエハーに対応した新工場棟を26年に熊本県で稼働させる計画。海外では、米ウルフスピードやスイスのSTマイクロエレクトロニクス、独インフィニオン・テクノロジーズも投資を拡大中だ。

SiC半導体の主導権をめぐる競争が激化する市場で、ロームが強みとする一つが、SiCウエハーの製造技術だ。同社は10年に、世界で初めてSiC金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を量産したが、実はその1年前の09年、SiCウエハーを手がける独サイクリスタルを買収している。SiC半導体のウエハーからチップまで垂直統合型生産体制を実現している。

これによりウエハーの安定調達が可能となるほか、SiC半導体デバイスを製造した際に生じた問題に対して、ウエハー製造段階までさかのぼって対策することもできる。伊野和英ローム取締役常務執行役員は「SiC半導体製造に不可欠な要素技術を全て持ち、各技術のすり合わせを全体最適でできる。これらノウハウは、他社が一朝一夕で追いつけない技術障壁を構築している」と胸を張る。

SiCウエハーはシリコンウエハーより製造難易度が高く、SiCパワー半導体のコストの3―4割を占めるとされる。同社は製造したSiCウエハーを自社で活用するほか外販もする方針。20年にはSTマイクロに対して数年間、ウエハーを供給すると発表した。伊野取締役は「基板(ウエハー)とデバイス両方でシェアを取る」と語る。

同社は独子会社でSiCウエハーの生産増強を続けているほか、宮崎県の新工場でも200ミリメートルウエハーを生産する方針。SiC半導体デバイスの生産能力を30年度に21年度比35倍に拡大する計画だが、ウエハーについても同等以上の生産能力に高める方針だ。

日刊工業新聞 2024年1月16日

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