いすゞ・日野自…「普通免許対応トラック」相次ぎ投入、勝負の分かれ目は?
運転手の時間外労働規制強化によって輸送能力が不足する「物流の2024年問題」の解決に向け、トラックメーカーが物流事業者の人材確保に寄与する車両を相次いで投入している。いすゞ自動車は5日、車両総重量(GVW)を3・5トン未満に抑え普通免許で運転できる小型トラックの電気自動車(EV)モデルを発売した。24年夏をめどにディーゼルエンジン車も追加予定。日野自動車も同等のGVWのEVタイプを22年に投入済み。個々の強みをいかに訴求できるかが需要取り込みの勝敗を分けそうだ。
いすゞ/EVモデル 発売
普通免許で運転可能な小型トラックについてはGVW3・5トン未満、最大積載量2トン未満などの要件が法律で定められている。
今回いすゞが投入する小型トラック「エルフミオEV」は、顧客の用途に合わせあらゆる部品やデバイスなどの組み合わせを可能にする開発手法「I―MACS」を用い、従来のディーゼル車とほぼ同じ架装に対応できるのが特徴。架装メーカーによる架装のほか、いすゞが完成車として平ボディーとバンボディーもそろえる。
主要モデルは全長4690ミリ×全幅1695ミリ×全高1965ミリメートル。最小回転半径は4・4メートルと小回り性能を維持し、コンパクトな電池パックの開発などで車両重量を抑制した。電池容量は40キロワット時で1回の充電で115キロメートル走れる。最大積載量は1050キログラム。ドライバー異常時対応システムなどの安全装備や、自動作動機能付き電動パーキングブレーキなど運転支援機能も充実させ、シート形状・素材の工夫で乗り心地も高めた。
リース販売のみで車両価格は非公表。小型トラック「エルフ」シリーズとして国内で年4万台の販売を目指すうち、1―2割をエルフミオEVと夏に投入する同ディーゼルタイプが占める想定だ。いすゞの中村治執行役員営業部門シニア・バイス・プレジデント(SVP)は「ミオは顧客から期待大。ディーゼルタイプの小型トラックで普通免許で乗れる車種は当社のみ。EVタイプの商談も始まっている」と意気込む。
日野自/提案・サポート力で対抗
対する日野自は先駆けて22年6月に普通免許で運転できるEV小型トラック「デュトロZ EV」を発売した。アルミバンタイプに加え、日に何度も乗り降りを繰り返す運転手の負担を考え、運転席と荷室をつなげた「ウォークスルーバンタイプ」を用意した。同タイプの床面地上高は450ミリメートル(空車時)と、通常の小型エンジン車の半分程度とし、運転手の落下事故防止に配慮。既にヤマト運輸が500台導入を公表するなど大口受注も決まっている。
課題は新型車両の訴求の方法だ。顧客の間では、24年問題やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に対応したいが、コスト面やEVという新たな選択肢を前にして「不測の事態で自社の稼働が止まることにならないか」といった不安も多い。顧客が新型車両を最適な形で導入・運行できるようにする「提案力」と稼働後の「サポート力」がこれまで以上に求められる。
いすゞは既存の運行情報を基に最適な導入計画の提案、充電器設置、脱炭素効果の定量化など、EV導入に必要な周辺要素を包括的に支援するプログラムを提案。
稼働時に遠隔で車両状況を把握できるコネクテッド技術も装備している。
日野自は関西電力との共同出資会社で、EVトラック導入・運用に関わる周辺支援サービスを手がけるキューブリンクス(東京都新宿区)を軸に、EV車両や周辺設備のメーカーを問わないオープンな枠組みで顧客を支援する。
キューブリンクスの桐明幹社長兼最高経営責任者(CEO)は「『EVは面倒』という評価で終わりたくない」とソリューション提案を強化する方針を示す。