ラストワンマイル狙う…日野自動車、EVトラック攻勢
日野自動車が顧客の使い勝手を追求した電気自動車(EV)小型トラックで攻勢をかけている。2022年6月に同社初のEV小型トラック「デュトロZ EV」を国内で発売。23年3月末までに約400台が登録された。同車のターゲットであるラストワンマイル(目的地までの最終区間)配送需要は足元で増加傾向。物流の担い手確保を考慮した車両と、EVトラックの“使いこなし”を支援するソリューションで、23年度は前年度以上の需要取り込みを狙う。(大原佑美子)
デュトロZ EVは最大積載量を1トン級、車両総重量を3・4トン級に抑え「普通免許で運転できて人材確保に貢献できる」(本間友基プロダクト推進部PZ PZ42兼PFZ主幹)点が最大の特徴。アルミバンタイプに加え、日に何度も乗り降りを繰り返す運転手の負担を考え、運転席と荷室をつなげた「ウォークスルーバンタイプ」を用意した。同タイプの床面地上高は450ミリメートル(空車時)と、通常の小型エンジン車の半分程度とし、運転手の落下事故防止に配慮した。市場の状況に応じて対応するが、量産する羽村工場(東京都羽村市)では年産600台程度の能力を持つ。今後、海外での発売も視野に入れているという。
21年5月には関西電力と、EVトラック導入・運用に関わる周辺支援サービスを手がける共同出資会社「キューブリンクス」(東京都新宿区)を設立した。日本で商用EVが普及し始めた現在は、顧客の基礎充電設備に注力。顧客に知見がない充電器出力やメーカー選定、受電設備や補助金申請などを一手に担う。日野自や関電ブランドにとらわれず、EV車両や周辺設備のメーカーを問わないオープンな枠組みで支援する点が強みだ。
EVトラック導入後の支援では商用EV最適自動充電システム「エモ助」を展開。拠点で契約するエネルギーを最小化しながらEV充電切れの不安を払拭する。顧客事業所の電力消費予測、保有EVトラックの配送計画、各車両の稼働状況などを踏まえ、充電を平準化して拠点電力のピーク超過を回避した自動充電を行う。現在は既存の顧客の拠点にEVトラック導入に必要な設備を整備する事例が多いが、必要な設備をあらかじめ整えた拠点を準備し、顧客に“引っ越し”してもらうサービスも見据える。
キューブリンクスの桐明幹社長兼最高経営責任者(CEO)は「『EVは面倒』という評価で終わりたくない」と、商用EVトラックを軸に派生するサービス開発に注力する。
矢野経済研究所(東京都中野区)によると、23年度のラストワンマイル物流市場規模は、前年度比9・7%増の3兆1940億円、30年度には4兆円規模に成長するとの予測で緩やかながらも増加傾向にある。差別化された製品、サービス、環境が整った中でEVトラックという顧客にとって新たな商材をどう訴求できるかが拡販のカギを握る。