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鉄道貨物輸送伸び悩み…2024年問題でトラック代替期待も、需要低迷の背景

鉄道貨物輸送伸び悩み…2024年問題でトラック代替期待も、需要低迷の背景

鉄道輸送の利用を増やすには災害対策が重要(イメージ)

トラック輸送の代替手段として期待される鉄道による貨物輸送量がなかなか伸びてこない。新型コロナウイルス感染症のまん延から4年近く経つが、輸送量はいまだにコロナ前を下回っている。経済減速などで化学品などの輸送需要が減少しているためだ。トラック運転手の時間外労働の上限規制厳格化が2024年4月に迫る中、モーダルシフトの加速が求められる。(梶原洵子)

鉄道貨物輸送の動向

トラック運転手の時間外労働の上限規制に伴い輸送力の低下が懸念される「物流の2024年問題」において、鉄道輸送はトラック輸送の代替手段として期待されている。24年4月まで半年を切り、鉄道輸送量は増えているかと思いきや、23年11月は前年同月比3・0%減の226万1000トンで前年割れとなっている。

ここ数年の輸送量の月間平均は19年が249万トン、20年が229万トン、21年が223万トン、22年が221万トンで、23年1―11月平均は218万6000トン。数字上はコロナ禍で落ち込んだ20年から回復していない。

鉄道貨物には天候次第で収穫量が変わりうる青果物や暖房用燃料もあり、月次比較だけで全体像をつかみづらいが、月間平均をみると低調さが続いていることは明らかだ。

輸送量は品目ごとに状況が違っており、足元では半導体不足の解消によって自動車部品などの輸送量は回復している。一方、化学薬品は需要低迷に伴う生産減少によって、紙・パルプはペーパーレス化などで低調となっている。化学品の需要は中国の経済減速が影響したようだ。

2024年問題への対応に向けて、JR貨物の犬飼新社長は「(鉄道貨物輸送の)引き合いは増えている」と説明する。

スズキは大型の31フィートコンテナを使い、代理店や販売店への自動車の純正部品・用品の輸送を始めた。静岡県の部品工場から福岡県への輸送に使い、トラック輸送に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を削減する。

サントリーホールディングス(HD)は、酒類・飲料の物流で東京―盛岡間の長距離トラック輸送の一部を鉄道に切り替えた。ネスレ日本(神戸市中央区)は、24年から中距離輸送にも鉄道を使い、トラック運転手の負担を軽減する。

このほかに医薬品や半導体製造用ガスなどさまざまな分野で、鉄道輸送が試みられている。

災害に弱いという鉄道輸送の弱点を克服する動きもある。日本通運はJR貨物と協力し、豪雨災害が頻発している鉄道・山陽線区間の不通時のバックアップ輸送体制を構築した。日通の広島県大竹市の拠点を中継拠点とし、岡山貨物ターミナル駅から北九州エリアの各駅の間をトラック輸送でつなぐ。

「鉄道輸送の利用を増やすには災害対策が重要だ。また、要望の多いところに輸送力を提供していく」(犬飼社長)とする。

政府は今後10年間で鉄道貨物輸送を2倍に拡大する方針を掲げる。多様な取り組みが広がり、輸送量が増えることが期待される。

日刊工業新聞 2023年12月26日

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