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住友商事はマングローブ植林…大手商社がカーボンクレジットで攻勢

住友商事はマングローブ植林…大手商社がカーボンクレジットで攻勢

住商はマングローブ植林でカーボンクレジットを調達する(インドネシア・スマトラ島)

大手商社がカーボンクレジット(炭素排出枠)事業で攻勢をかけている。住友商事は海外のカーボンクレジット事業に参入。インドネシアのマングローブ植林事業に資金拠出した上で、二酸化炭素(CO2)の吸収で生じるクレジットを調達して主に日系企業に販売する。化石燃料を扱うエネルギー会社や製造業などCO2の削減手段が限られる企業の購入を見込む。三菱商事などでも、市場機能を活用してカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)需要を取り込む動きが活発化している。

住友商事はこのほど、植林などによるカーボンクレジット事業を手がけるシンガポールのバリューネットワーク・ベンチャーズ・アドバイザリー・サービシズ(VNV)からクレジットを調達する契約を同社と締結した。VNVがインドネシアのスマトラ島で始めたマングローブ植林プロジェクトを対象に事業資金を拠出し、20年間でCO2約60万トン相当のクレジット取得を見込む。

クレジットは認証機関大手の米ベラの認証を受ける計画だが、インドネシア政府が検討中の認証制度を使う可能性もある。クレジットの販売先の開拓を担う住友商事は、天然ガスの供給網でCO2相殺を図る企業などの購入需要を想定する。

植林事業ではマングローブの育成管理などに協力する地域住民に対価を払う。樹木による津波被害軽減や魚介類などの生態系保全を含め持続可能な地域社会の形成も推進する。

住友商事はVNVとの間で、植林などのクレジット事業の国際展開を共同検討する覚書も締結した。日本で海藻などを活用したクレジット事業に取り組む住友商事は、アジア諸国を中心に18カ国で森林由来クレジットなどを創出するVNVと海外事業の拡大を図る。

米マッキンゼー・アンド・カンパニーなどによれば民間のカーボンクレジット市場は2030年に世界で最大1800億ドル(約27兆円)と20年比600倍に拡大する見通し。国内商社では三菱商事が大気中のCO2除去由来のクレジットなどを扱うほか、丸紅は秋田県で森林管理によるクレジット創出を図るなどCN実現を推進する動きが広がっている。

日刊工業新聞 2023年11月01日

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