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売買代金年10億円へ…東証、カーボン・クレジット市場開設

売買代金年10億円へ…東証、カーボン・クレジット市場開設

カーボンクレジット市場の開設イベントに多数の参加者が集まった

日本取引所グループ(JPX)の東京証券取引所は、二酸化炭素(CO2)排出量の削減枠を取引するカーボン・クレジット市場を10月11日に開設する。事業者間で相対取引しているカーボン・クレジットの市場取引は初となる。2050年のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)や30年削減目標の実現に向け、カーボン・クレジット取引を通じて企業のCO2排出量削減を後押しする。(編集委員・川口哲郎)

市場参加者は9月19日時点で188者の登録があり、エネルギーだけでなく多様な業種の企業・団体が参画している。この中で経済産業省主導で設立された産学官のコンソーシアム「GXリーグ」の参画企業は66者だ。GXリーグ参画企業は高い排出量削減目標を自主的に掲げ、達成に向けて市場を通じたクレジット取引を行う。そのための市場として東証にカーボン・クレジット市場が創設された。

当初は国が認証する「J―クレジット」を取引し、民間主体のクレジットにも対象を広げる見通しだ。市場開設に先立って22年9月―23年1月に実証が行われ、売買高合計は14万8933トン―CO2、売買代金合計は3億2800万円だった。

実証期間の22年9―11月は月間で1万トンを下回る売買高だったが、23年1月に10万4013トンと一挙に増えた。3月の年度末に向けて必要量を調達する意向が働いたのに加え、1月から売買区分を変更した影響が大きかった。

1月以前は例えば省エネルギーの分類の中でもボイラ導入、空調設備導入といった方法論まで指定し、売買区分が約70種類あった。このため売りと買いの注文が一致せず、取引不成立になりがちだった。1月以降は「省エネ」「再エネ(電力)」「再エネ(熱)」と6種類に絞った結果、取引成立が格段に増えた。10月からの市場運営も6種類の売買区分を踏襲する。

実証では183者の参加者のうち売買成立したのは55者。このうち、買いのみ成立が34者に対し、売りのみ成立が8者だった。売り手は農林業や地方公共団体などのクレジット創出者が占め、買い手よりも数が限定される。実際の市場運営でも買い手の需要に対し、売り手の供給をいかに確保するかが課題となりそうだ。

カーボン・クレジット市場の参加者は申し込みベースではすでに200者を超えているという。東証は今後もGXリーグ参画企業を中心に市場参加者を増やす方針だ。売買代金は実証期間中の数字を基に試算し、「年間10億円程度は目指したい」(JPX関係者)としている。

GXリーグの自主的な排出量取引は23―25年度が試行段階で、26年度から第2フェーズに入る。カーボン・クレジット市場も26年度から「J―クレジット」以外の取り扱いを始める見通しだ。GXリーグの排出量取引制度の超過削減枠が候補となる。また、日本の技術を活用して海外の温暖化対策に貢献する「二国間クレジット制度」(JCM)や、海外の民間や非政府組織(NGO)が主導する「ボランタリークレジット」が検討対象に挙がっている。

東証としては市場参加者を広げていくことに加え、「制度の利便性を高める」(同)ことに注力する。特定の指標のクレジットを対象にした立会外取引や、手続きの時間帯拡大なども検討している。


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