GX関連で売上高100億円へ、日立システムズが提供する「成長ドライバー」事業の中身
日立システムズはグリーン変革(GX)関連事業の売上高で2027年度に100億円を目指す方針を明らかにした。27年度は25年度から始まる次期中期経営計画の最終年度。24年度売上高目標比で約2・2倍に引き上げ、柱の事業に育てる。衛星データを活用して森林の二酸化炭素(CO2)吸収量の可視化からカーボンクレジット(炭素排出枠)取引までを総合的に支援するサービスを24年度に提供開始予定。同サービスを成長ドライバーと位置付ける。
日本の国土の約7割は森林が占める。同サービスの展開により、林業の活性化を支援して自治体や森林組合、森林保有企業などのカーボンクレジットの創出や販売を加速。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現や経済成長への貢献を目指す。柴原節男社長は「森林の持つCO2の吸収機能を換金できる。(林業従事者の高齢化や人手不足に伴う)山林保全の課題に対して経営的にどう取り組むか再考する契機にもなるのでは」と話す。
サービス展開に先立ち、衛星を活用した温室効果ガス(GHG)排出量の測定技術を持つ仏エバーインパクトと連携し、石巻地区森林組合(宮城県石巻市)が管轄する森林のうち植林や間伐などが進んでいる数千ヘクタールを対象に実証実験を行った。この結果、年間2万2500トンのCO2吸収量と最大2億6000万円相当のカーボンクレジットの創出可能性を確認できた。
日立製作所は30年度までにグループとして自社事業所におけるカーボンニュートラル達成を掲げる。日立システムズも30年度をめどに社用車約1000台をガソリン車から電気自動車(EV)に切り替える計画を進めるなど、脱炭素化の取り組みを加速している。
インタビュー: 組織横断的に事業展開
柴原社長にGX事業の戦略などを聞いた。(熊川京花)
―4月にグリーントランスフォーメーション推進統括本部を立ち上げました。
「GXについて自社内での取り組みと社外向けの事業展開を組織横断的に推進する。各事業のグループ長が副本部長として所属し、投資も一括で考える」
―GX事業の拡大に伴って人材のスキル転換も進めています。
「CO2排出量の概算が算出できる(能力があることを認定する)資格『炭素会計アドバイザー』を取得し始めている。金融業向けの事業でデザインシンキングを担う部隊が先行して取り組んでおり、ハードウエアの保守部隊にも期待している。サプライチェーン(供給網)全体でCO2排出量を算出できる2級については24年度に10人、27年度に30人の取得が目標だ」
―生成人工知能(AI)が事業全般に与える影響は。
「大きい。日立グループでは製品事故に関する反省会『落ち穂拾い』で失敗に学ぶことを70年以上継続しているが、そのデータを現場であまり活用できていなかった。世代交代で有識者が退職する中、頼れるのは蓄積したデータだ。日立のIoT(モノのインターネット)技術基盤『ルマーダ』の発想もここにある」
「過去の事故事例を振り返って上流設計の段階でチェックをしたり、ある課題解決に適したユースケースを推奨したりと、データを最大限に活用したい。事故やプロジェクト管理のロスのコスト影響は多大だからこそ、なくすことができれば、収益性の改善に大きく寄与するだろう」
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