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購入殺到で価格9倍…「Jブルークレジット」活況の要因

購入殺到で価格9倍…「Jブルークレジット」活況の要因

海中の炭素の吸収や魚のすみかになる藻場

商船三井など100社超購入 藻場再生・漁業振興に貢献

海の植物が取り込んだ炭素「ブルーカーボン」の取引が活発だ。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が2020年から「Jブルークレジット」として認証を始めると100社以上が購入に殺到し、国が管理する「J―クレジット」の9倍の価格がつくまでになった。温室効果ガス(GHG)の除去や地域貢献が企業の参加意欲をかき立てている。

国連環境計画が09年、海の植物が成長過程で吸収する炭素をブルーカーボンと名付けたことで、温暖化対策の一つとして注目されるようになった。日本政府も21年度分からブルーカーボンを差し引いたGHG排出量の報告を始めた。

JBEは炭素吸収量を測定し、独自のJブルークレジットを認証する。陸上での排出削減量を取引可能にした「カーボンクレジット」と同じで、漁業組合やNPOなどは海藻を育てた成果としてJブルークレジットを販売し、購入企業は自社の排出量から炭素吸収分を打ち消す「オフセット」ができる。

JBEの20年度の認証実績は1件、二酸化炭素(CO2)換算22トンだった。21年度は4カ所、合計80トンと増加し、22年度は21カ所、合計3733トンと急拡大した。これまでに商船三井や東京海上日動火災保険、丸紅東ソー、JFEエンジニアリング、日本ゼオン、トクヤマ、東京ガス、など100社以上が購入している。

国のJ―クレジットは年100万トンを認証しており、Jブルークレジットは少量だ。それでも活況な理由として、GHG除去手段としての期待が挙げられる。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、排出量と除去量との均衡による脱炭素達成を目標に掲げている。企業も省エネ化や再生可能エネルギーの利用を徹底し、残った排出量を森林による吸収や大気中からのCO2除去によって相殺することが求められる。ブルーカーボンも除去手段に該当する。

地域貢献も人気の要素だ。魚の産卵や成育の場となる藻場が消失する「磯焼け」が全国で起きており、漁業関係者の死活問題となっている。企業はJブルークレジットの購入を通じて藻場再生や漁業振興に協力できる。

オフセット対応、低価格化で大量購入支援

JBEの桑江朝比呂理事長は「Jブルークレジットを買う側から作る側に回る企業も少なくない」と語る。購入実績のあるセブン―イレブン・ジャパンや住友商事などが、地元漁協と協力して藻場再生事業を始めた。Jブルークレジットの発行が地域貢献活動の成果を認めてもらえた証拠となり、発信力が高まる。

盛り上がりを反映してJブルークレジットは高値が付いている。21年度の売却額は、CO21トン当たり平均7万2816円。さらに22年度は同7万8036円に上昇した。価格表示があるJ―クレジットの4―9倍だ。価格が高いほど、地域に届く資金も増える。

もちろん、高額だと企業は大量購入が難しい。そこでJBEは沖合に場所を確保し、大規模な藻場を作る構想を持つ。Jブルークレジットを大量に創出して低価格化を狙う。一方、現状の地域での創出事業との併存も考えている。「地域に貢献したいニーズと、オフセット目的で大量購入したいニーズのどちらにも応える」(桑江理事長)という。

国のJ―クレジットは、クレジット分を差し引いた排出量を国に報告できる。Jブルークレジットはボランタリー(自主)クレジットであるため、国への報告に活用できない。だが、世界的には自主クレジットが主流となっている。桑江理事長は「納得できるストーリーがあれば選んでもらえる」と、市場拡大に自信をのぞかせる。

日刊工業新聞 2023年06月30日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
最近、ブルーカーボンという用語を聞く機会が激増しています。樹木が吸収した「グリーンカーボン」があるになぜ、と思っていたら桑江理事長の説明を聞いて疑問が解けました。記事で触れませんでしたが、藻場が回復して魚が集まる、漁獲が増える、水質が浄化される、観光客が訪れるなどの効果をすべて金銭換算すると経済効果も大きいです。企業としても投資判断しやすいです。著書『自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ』を発売しました。ビジネスと生物多様性の最新動向を知りたい方向けです。

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