営業赤字150億円に…ニデックはEV向け駆動装置事業をどう立て直す?
ニデックは成長の柱に位置付ける電気自動車(EV)向け駆動装置「イーアクスル」事業が、2024年3月期に約150億円の営業赤字に落ち込む見通しとなった。24日開催の決算説明会で明らかにした。期初に黒字化を見込み、4―6月期も黒字化を達成したが、主戦場の中国で価格競争が激化。「競合各社が赤字を垂れ流している。価値を認めてもらえない競争はやるべきではない」と、永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は説明。収益性を高めた第3世代品の投入を急ぐなど、事業の見直しを迫られている。
現在、ニデックのイーアクスルの主力製品は第2世代。22年10月に量産を開始し、初めて同事業が四半期ベースで黒字化した4―6月期は販売台数の22%を占めた。通期ではこの比率を81%に伸ばす計画を立てていたが、今回69%にトーンダウン。同時にイーアクスルそのものの販売計画も54万5000台(期初は94万9000台)から35万台へと大幅に引き下げた。採算向上の決め手となるはずだった第2世代の投入効果が、ここに来て早くも剥落し始めている。
永守会長は「安い注文をたくさん抱え、それで生産キャパを埋めてしまっては業績の改善は見えてこない。15%の利益が出るような形で競争に打ち勝つ」と強調する。
そのためニデックでは収益性の高い第3世代品の開発を急ぎ、24年6月にも市場投入する。イーアクスル事業で今期約150億円の営業赤字を見込むうち、100億円超が研究開発費の追加が要因となっているという。
第3世代品は、従来のモーターとインバーター、ギアに加えて、電源関連の部品もインバーターに集約した7部品一体型「7in1」として展開する。コスト負担の大きいインバーターについては、開発と製造を中国国内で完結させる考えだ。半導体などの部品も全て中国製で調達し、ローカル体制でスピード対応していく。
同時に販売戦略も見直す。永守会長は「これまで中国一辺倒でやってきたが、日本や米国、欧州からの引き合いも出てきた」と明かし、イーアクスル事業の戦略転換を明言。車載事業を統括する岸田光哉副社長も「足元の中国事業は価格破壊が進み、意志を持って(不採算機種の)受注を制限している。今後は儲かる機種を、特に合弁相手の広州汽車集団、NPe(ステランティスとの合弁会社)の受注を加速していく」との方針を示した。
車載事業全体ではパワーステアリングやブレーキモーターなどで24年3月期は営業黒字を確保できる見込み。ただイーアクスルの競争環境は激変。「(イーアクスルの)市場が爆発していく時期」(岸田副社長)の25年に向けてどれだけ足場を築けるのか、ニデックにとって重要な時期にさしかかっている。
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