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「イーアクスル」次世代品開発で“因縁の相手”と協業、ニデック・ルネサスの勝算

「イーアクスル」次世代品開発で“因縁の相手”と協業、ニデック・ルネサスの勝算

ニデックの大村隆司常務執行役員(左)と、ルネサスエレクトロニクスのヴィヴェック・バーン執行役員

ニデックは電気自動車(EV)向け駆動装置「イーアクスル」で、次世代品の開発を加速する。2019年に第1世代の量産を始めて以降着実に前進する中、ルネサスエレクトロニクスとの協業を発表。23年末までに次世代品の試作品第1弾をつくる計画で連携を進める。ニデックの主戦場である中国では複数部品を一体化したイーアクスル「Xin1」化が進んでおり、次世代品で中国シェアのさらなる拡大を狙う。

「我々にも勝機はある。それを確かめるためにも(ルネサスとの)試作品開発は重要になる」。6日、川崎市内にあるニデックの拠点で開いた記者会見で、大村隆司常務執行役員はこう強調した。中国では国を挙げてEVに注力し、Xin1化も進む一方で、現有の半導体を使って製造しているという。

イーアクスルはモーターやインバーター減速機が一体になった駆動装置。現状はこの「三位一体機」の採用が増えているが、高性能・低コスト・小型軽量化して車両開発の効率化を図るために構成部品を統合する動きが加速している。

大村常務執行役員は「Xin1に占める半導体の割合は非常に高い。だが、半導体は我々だけではできない。パートナーが重要になってくる」と説明。一方で「Xin1のような新しいのものに対して、最適な半導体サプライヤーがまだいない」とも明かす。車載用半導体などに強みを持つルネサスとともに、こうした課題の解決も目指す。

ルネサスのヴィヴェック・バーン執行役員は「ニデックのイーアクスルに関するノウハウとルネサスの技術を持ち寄り、複雑化しているXin1向けに業界最高の性能で小型軽量・低コスト化を実現した高品質な試作品ができる」と意気込む。

ルネサスは過去にニデックが買収に動き、断念した“因縁”の相手でもある。買収自体は成功しなかったが、半導体の安定調達に向けて22年5月に設立した半導体ソリューションセンター(川崎市幸区)の所長には、元ルネサス幹部として半導体事業を手がけた経歴がある大村常務執行役員が就いた。永守重信ニデック会長兼最高経営責任者(CEO)はスカウトした同氏を「半導体の専門家で日本でも有名な方。戦略をきちんとつくってくれる」と評すなど、半導体メーカーとしてのルネサスの信頼は厚い。

この1年、半導体戦略のかじ取りを担ってきた。サプライヤーとの強固な関係を築くため、長期供給契約(LTA)のスキームを確立。ニデックグループで集中購買するなど取り組みを進めている。


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日刊工業新聞 2023年06月07日

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