大型炉の安定燃焼で発電ロス減らす、日立造船が燃焼画像認識を実証
日立造船は、大型焼却炉で人工知能(AI)を活用した燃焼画像認識システム「CoSMoS(コスモス)」の実証を始めた。自動燃焼制御との組み合わせにより燃焼を安定化し、ゴミ焼却発電のロス減少につなげる。既に導入実績がある小・中型焼却炉に加え、1日当たりの処理量150トン以上の大型炉でも導入を目指す。2025年にも既存・新設問わず実際のゴミ焼却施設向けに受注を始める。
炉内に設置した複数台のカメラで1台当たり約1000枚の画像を収集し、画像診断モデルを作成する。正常な燃焼状況、燃焼が不安定になるゴミ枯れの有無、ゴミ塊の三つの状態が発生する確率を算出。その結果から、自動燃焼制御システムが炉内に空気やゴミを適切に送り込むことで燃焼を安定化させる。
日立造船は22年に、大阪市や八尾市などで構成する大阪広域環境施設組合(大阪市阿倍野区)と燃焼制御の高度化を目指す実証事業で基本協定書を締結。現在、同組合が運営する焼却施設「舞洲工場」(大阪市此花区)で、コスモスの画像処理能力や処理速度の向上に向けた実証を進めている。
ゴミ焼却炉は自動燃焼制御システムで燃焼を安定化させるが、急なゴミ質の変化が生じると燃焼状態が不安定になる。このため熟練運転員が経験を基に燃焼状態を予測し、手動操作で燃焼状態を改善している。
ただ大型炉はゴミを燃やす火格子が複数列あり、モニターから全体の燃焼状態が見えずらく、操作の難易度が高かった。
コスモスの導入を通じて、熟練者による燃焼制御の手動操作を減らし、作業負担低減や運営効率化につなげる。
日刊工業新聞 2023年10月20日